2020 Fiscal Year Research-status Report
電子機器の静電気耐性改善に要するESD保護素子モデリング技術の確立
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19K04930
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉田 孝博 東京理科大学, 工学部電気工学科, 准教授 (10385544)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 静電気耐性 / 静電気放電 / ESD保護素子 / ESDストレスシミュレーション / サージ防護素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,電子機器の静電気耐性の改善に用いられる静電気放電(ESD)保護素子に対して,同一仕様のESD保護素子間の特性や保護性能の差も表現できる水準を備える,ESD保護素子の計測・評価技術,ならびにESD保護素子の動的応答特性モデリング手法とESDストレスシミュレーションの精度改善である. ESDストレスシミュレーション手法の研究では,2019年度により検討したESDシミュレーションと実測との間の誤差発生要因を元に,2020年度には研究実施計画に沿った形で,2019年度に移行したより高機能な高周波回路シミュレータにて精度改善のための回路構成の見直しを試行錯誤したが,明確な精度改善は実現できなかった.しかし,回路構成と誤差の発生傾向のノウハウを移行後の高周波シミュレータにて蓄積できたとともに,2021年度に行うべき新たな回路構成のアイディアを得た. また,提案手法であるベクトルネットワークアナライザ(VNA)を用いたESD保護素子の動的応答特性モデリング手法の対象となるESD保護素子として,これまでのTVSダイオードと並んで電子機器に多く採用されているサージ防護素子(SPD)への対応を電子機器メーカから要望されていた.そのため, SPDのモデリングに必要不可欠となる,製造終了しており入手困難であったGHz帯までの広帯域と数kVの高耐電圧を同時に満たすバイアスティが,2020年12月下旬に海外の中古で入手でき,必要な機材が揃えられた.その後,このバイアスティと高電圧電源とVNAを組み合わせて,SPDの動作状態のsパラメータも測定できることを確認した.このことで,2021年度には,SPDに対してESDストレスシミュレーションを行い,SPDへの提案手法の適用可能性を検証する研究を進めることができるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前述の研究成果で述べた2項目について,前者のESDストレスシミュレーションについては,試行錯誤に時間を要した上に,明確な精度改善が得られなかったこと,後者のESD保護素子の動的応答特性モデリングのSPDへの対応については,要求条件を満たすバイアスティの入手に1年を要したことで,計画よりも進捗は遅れてしまった.そのため,全体の進捗状況を「遅れている」と判断した. しかし,前述のように,前者は2021年度に試行すべき回路構成のアイディアとノウハウを得ており,後者は,機材が無事に揃い,それらの機材による予備実験を済ませて測定可能であることを確認しているため,2021年度には研究が順調に進展しそうである.
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Strategy for Future Research Activity |
提案のシミュレーション手法の精度改善のための回路構成の見直しに関しては,2020年度に得た試行すべき回路構成をもとに検討を進め,ESDシミュレーションと実測との間の電圧波形の誤差を減らしてゆく.なお,新たな回路構成のアイディアを現在の高周波シミュレータの機能的制約で実装できない課題が生じた場合には,他種の高周波シミュレータへ移行することが対応策となる. 一方,提案手法の対象とするESD保護素子のSPDへの対応に関しては,ESDストレスシミュレーションで得られるESD印加時のSPDの電圧波形と,現実のESD印加時に実測する電圧波形を,波形形状,ピーク電圧値,クランピング電圧値の観点から比較し検証を行う.なお,ESD保護素子の仕様が同等であっても,ESD保護性能や特性が異なることが開発現場で問題視されているため,同一仕様の複数種のSPDについても同様の検証を行い,本手法の分解能の高さも併せて検証する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,前述の要求条件を満たすバイアスティの入手が2020年12月となり,その後の測定が進まず,その測定に必要となる装置を製作する部品代の支出が無かったこと,そして,前述のように研究の進捗に遅れが生じており,国内学会,国際学会での発表が行えなかったことが主要因である.また,コロナ禍の感染予防の観点から,大学院生による研究室での測定作業補助などのアルバイトを控えてもらったため,人件費の執行も少なくなったことも一因である. 2021年度は前述の様に研究を進めてゆける状況となったため,次年度繰り越しと2021年度の助成金を合わせて計画に沿って使用する予定である.
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