2019 Fiscal Year Research-status Report
原子力プラントの内外構成要素間の相互作用を考慮したPRA手法の開発
Project/Area Number |
19K04932
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
牟田 仁 東京都市大学, 工学部, 准教授 (20710297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大鳥 靖樹 東京都市大学, 工学部, 教授 (60371431)
竹澤 宏樹 東京都市大学, 工学部, 講師 (20756712)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 深層防護 / シビアアクシデント対策 / 緊急時対策 / フィードバック / 相互作用 / リスク評価 / マルチレイヤモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓から,日本では安全規制要求の範囲が深層防護の第3層「設計基準内への事故の制御」から第4層「シビアアクシデント対策」まで拡張されるとともに,第5層「サイト外の緊急時対策」に対する対応が強化された.地震を想定した原子力施設における第4層及び第5層の事故及び対策の特徴を踏まえると,様々な組織が関与し,さらには現場で人的操作による対応が必要であり,これらに基づき複数の事象の同時発生を想定したリスク評価の枠組みが必須となる. このリスク評価の枠組みには,人や組織,あるいはインフラ,構築物,システム,機器からのフィードバックを含む,構成要素間の相互作用を考慮できる分析手法が必要であり,従来のPRA(Probabilistic Risk Assessment)手法では不十分である.このような分析評価を可能とするため,システム理論に基づくアクシデントモデルであるSTAMP/STPA(Systems-Theoretic Accident Model and Process/System Theoretic Process. Analysis)手法を導入し,従来のPRA手法と上記STAMP/STPA手法のそれぞれの視点から,対象となる体系の分析範囲をレイヤとして表現し,これらからマルチレイヤを構築することにより,第4層及び第5層の事故及び対策を分析を可能とするリスク評価手法を構築している. 昨年度は,地震等の外部事象による核燃料施設の重大事故のリスク評価のため,複数事故の同時発生並びに機器損傷及び人的操作による時間的・空間的な影響のフィードバックが考慮可能なインタラクションマルチレイヤモデルを開発した.このモデルを核燃料加工施設に適用し,定性的なリスク評価のフィージビリティを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で検討対象とするポイントは,① 余震を含む地震や津波等の外的事象の同時発生モデルの開発,② 原子力プラントを取り巻く周辺環境(E)やインフラ(I)の論理モデル化,③ 構築物(S),システム(S),機器(C),人間系(H),周辺環境(E),インフラ(I)における相互作用のモデル化,④ ①~③の論理モデルをベースとした複数基立地サイト・複数プラントの事故シーケンス 解析モデルの構築,⑤ ①~③の論理モデルをベースとしたリスクの時間変化の数学的な記述(動的解析モデルの開発)5点である.本研究では昨年度に,主として②,③のモデル開発と燃料加工施設を対象として論理モデルを構築し,定性的なリスク評価に適用可能であるといった見通しを得ている. 具体的な進展として,一つ目は,環境やインフラまでを対象とした複数事象の同時発生の影響を分析するには,分析対象としている系の構成要素間の関係について,制御する側と及び制御される側の関係に加えて,物理的な影響の作用させる側と作用を受ける側の関係,構成要素間の物質の移行等に拡張する必要があり,本手法が取り扱う相互作用について,制御に加えて,物理的な影響による相互作用,物質の移行による影響等へ拡張を行った. 具体的な進展の二つ目は,従来のPRA手法と上記STAMP/STPA手法のそれぞれの視点(前者は個々の機器故障及び人的過誤に着目し,後者は構成要素間の相互作用に着目する)から,対象となる体系の分析範囲をレイヤとして表現し,これらから多層レイヤを構築することにより,従来の多層モデル加え,機器間,機器と人の間の相互作用による事象進展も考慮可能な,第4層及び第5層の事故及び対策を分析を可能とするリスク評価手法を構築し,多層レイヤの構築からハザード分析,さらに必要な対策の分析を実施するための一連の手順を整備した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で検討対象とするポイントは,① 余震を含む地震や津波等の外的事象の同時発生モデルの開発,② 原子力プラントを取り巻く周辺環境(E)やインフラ(I)の論理モデル化,③ 構築物(S),システム(S),機器(C),人間系(H),周辺環境(E),インフラ(I)における相互作用のモデル化,④ ①~③の論理モデルをベースとした複数基立地サイト・複数プラントの事故シーケンス解析モデルの構築,⑤ ①~③の論理モデルをベースとしたリスクの時間変化の数学的な記述(動的解析モデルの開発)5点であり,令和2年度は①,④を主として検討し,さらには⑤を実現するための手法の検討も行う. 具体的な課題としては,燃料加工施設のようなデータ点数が少ないプラントのフラジリティ評価手法として,簡易ハイブリッド方が提案されているが,この手法と本研究手法とをどのようにリンクさせるのか,また様々な外部ハザードの複合事象に対し,具体的な事故シナリオの検討と相互作用モデルをどのように融合させるのか,複数機立地サイト,複数機プラントのリスク評価への適用をどうすれば良いか,といった点が挙げられる.また,動的な定量評価を行うための解析プロセスについても開発が必要である.
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Causes of Carryover |
生じた次年度使用額の殆どは人件費の予定額に達しなかったことによる.主な原因はアルバイトによるコロナ禍によりデータや作成図書の整理等を実施できなかったためである. 現状,成果のジャーナル論文化を進めており,また様々な学会での成果発表を検討していることから,アルバイトの謝金及び学科発表における参加費,出張費用で使用する予定である.また,動的解析のプログラミングを実施するために計算機の追加導入を行う予定である.
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