2019 Fiscal Year Research-status Report
音走査された音響刺激による屋内避難誘導の実現のための音響特性分析
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19K04937
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
三好 哲也 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (10254434)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 避難誘導 / 走査音 / 方向定位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,音源を避難方向に順に走査する避難誘導システムにおいて,効果的な誘導を実現する音源走査方法や音源の特性を探求することを目的としている.この目的のために,(1)走査された音源に対する方向性の認知実験に基づく認知特性の評価と(2)走査された音源に対する追従実験に基づく追従特性の評価の2段階に分けて,避難誘導システムとしての有効性の評価・分析に取り組む計画である. 2019年度には,広い屋内施設の天井に多数のスピーカを格子状に設置することを想定して,多数スピーカ上を走査された音源に対する走査方向認知実験を行い,走査音響刺激を決定する要素に関する認知特性を分析した.また,同様の環境における走査音源への追従実験を行い,走査パターンによる追従成功率についての評価を行った.その結果,以下のことを明らかにし,関連学会で研究成果発表を行った. 走査された音源の走査方向認知実験の結果から,(1)音源に音声を用いる場合と走査時間間隔を延長した場合に走査方向の認知率が向上すること,(2)格子状のスピーカ配置の場合,走査パターンが被験者位置から離れると認識率が低下し,後方から走査されるパターンほどその傾向が顕著であること,(3)走査パターンとして直線走査と屈曲走査を比較した結果,屈曲走査パターンにおいても直線走査パターンと同等の走査方向認知ができることを確認した. 走査される音源への追従実験の結果から,(1)音源走査方法や音源の特性の追従効率への影響は方向認知実験で得られた知見と一致すること,(2)走査パターンが格子点で屈曲するなど走査パターンが複雑になると追従に時間を要したり追従ルートを逸脱したりして追従効率が低下することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,多数スピーカ上を走査された音源によって周辺の人が避難方向を認知できるシステムの開発を目指し,その実現のために走査される音響刺激の時間的,空間的変化が人に与える心理的効果についての分析に取り組んだ.また,単純なパターンで走査された音響刺激への追従に関する基礎的実験を行い,走査パターンや走査される音響刺激によってある程度追従できることを確認した.これは本研究課題で行う研究の基礎的部分として計画された内容であり,計画した通り実施できたと評価している. また,本研究課題で計画された実験においては,音響刺激配信のための有線ケーブルで連結された多数のスピーカーシステムを用いて実験を行っている.本研究課題では,音響刺激の走査パターンを実験目的に応じて柔軟に変更できる実験環境整備のために,無線による配信システムの構築が計画されていたが,そのシステムのプロトタイプの開発が計画通り進行している.このことからも本研究課題は計画通り進行していると評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では,(1)走査音源に対する方向性の認知実験に基づく認知特性の評価と(2)走査音源に対する追従実験に基づく追従特性の評価を行い,多数スピーカ上を走査された音源による避難誘導の可能性を評価することになっている.そのために,想定した条件での音響刺激を走査させる実験を繰り返し行うことになっている.このような実験を行うにあたっては,想定する要因の検証範囲を事前に種々の予備実験を通して設定する必要がある.本研究課題では,2019年度にその基礎的実験を行い,影響する要因の分析を進めたことによって,人が認知できる走査音響刺激に対する感度領域がある程度限定できるようになり,今後の検証課題が明確化できている.また,本研究課題で人の誘導に大きく影響する走査パターンの探求においては,音響信号の無線発信システムの構築によりスピーカ配置の物理的制約を緩和できる実験環境が構築できている.この音源を走査させるプロトタイプシステムを想定する実験プロトコルに適合するシステムに改変して,より現実的なスピーカ配置における避難誘導効率についての検証を進める予定である.
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Causes of Carryover |
本申請課題では,多数スピーカへの音響信号を無線配信するシステムの開発を2019年度に計画し,2020年度の実験からこのシステムの利用が計画されている.このシステムは,サーバーとポータブルPCを用いたクライアントから構成することになっている.このシステムの開発は研究室の据え置きサーバーを用いて進めたが,クライアントシステム開発が年度末までかかり,実験場所への持ち運び可能な制御サーバの購入が年度内に行えなかったため次年度に購入することになった.しかしながら,無線配信システムのプロトタイプシステムの開発はすでに完了し,次年度の避難誘導実験を開始するまでには,制御サーバの入手は可能であるため,研究計画には支障は生じない.
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Research Products
(4 results)