2021 Fiscal Year Research-status Report
Tephra stratigraphic and petrological study on prediction of generation and sequence of phreatomagmatic eruptions
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19K04951
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
宮縁 育夫 熊本大学, くまもと水循環・減災研究教育センター, 教授 (30353874)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マグマ水蒸気噴火 / 噴火堆積物 / 層序学的調査 / 物質科学的検討 / 火山活動推移 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,わが国の活火山で頻発するマグマ水蒸気噴火は,顕著な前兆現象が検出されずに発生することが多く,人命や火口周辺の施設に甚大な被害を及ぼすなど,防災上極めて危険な噴火現象の一つである.本研究では,阿蘇火山中岳を主な調査対象として,現地調査や噴出物の観察・分析等の結果から,マグマ水蒸気噴火への推移と発生過程を地質学的に検討し,将来のマグマ水蒸気噴火災害の軽減に向けた提案を行うことを目的としている. 2021年度は,阿蘇火山中岳における2019年の火山活動に焦点を当て,ごく小規模な噴火活動に伴う噴出物について現地調査を行って火山地質学的特徴を明らかにし,中岳における活動推移やその予測について検討した.阿蘇火山中岳第1火口では2019年7月下旬から2020年6月中旬にかけて,ほぼ連続的なマグマ噴火が発生し,その後も2021年10月に2回の水蒸気噴火が起こった.それらの活動に先行して2019年4月16日から複数回の小規模噴火が認められた.なかでも5月3日~5日には噴煙が2000mまで上昇して阿蘇カルデラ南方域にまで降灰が観察されるイベントが発生した.この活動に伴う噴出物は灰色を呈する細粒火山灰であり,中岳第1火口から南南東方向と南西方向に2つの主軸をもって分布しており,噴出物量は700トン程度と概算された.また,噴出した火山灰の9割程度はさまざまな程度に変質した岩片からなるが,ごく少量(2~4%)の新鮮なガラス片が含まれることがわかった.それらのガラス粒子はほとんど変質していないことから,新しいマグマから供給された本質物質である可能性が示唆された.この活動以降もごく小規模な噴火が断続的に発生し,2019年7月にかけて新鮮なガラス片の割合が漸増していく傾向が認められ,ごく少量ながら本質物質の噴出が検出されるなど,本格的なマグマ噴火やその後の水蒸気噴火の先駆活動であると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の主な調査対象である阿蘇火山中岳では2021年も火山活動が不安定な状況が続き,同年5月には噴火警戒レベルが1から2(火口周辺規制)に引き上げられた.6月に一旦噴火警戒レベルが1に引き下げられたものの,10月13日に再びレベル2となり,さらに10月20日にレベル3(入山規制)にまで引き上げられた.その後,11月18日に噴火警戒レベルが2に引き下げられたが,2021年度末まで火口周辺域への立入と現地調査が実施できない状況であった.そのために進捗状況は大幅に遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の特徴は,わが国でもっとも活発な火山の一つである阿蘇火山中岳を主な対象として,野外調査をベースとした研究を実施することである.とくに,中岳第1火口周辺域での噴出物調査が最重要であるが,本研究の開始時から2021年度末までの大部分の期間,噴火警戒レベルの引き上げにより,安全上の問題から現地調査を行えない状況が続いた.活動が静穏化して噴火警戒レベルが引き下げられた,わずかな期間に現地調査を行ったが,現在の火山活動の推移を予測することは難しく,2021年度もガス規制等を含めて火口周辺域へ立ち入れないことが多かった.そこで,過去の噴火記録と歴史文書の精査や,遠方域でも実施できる過去数千年間の噴火履歴調査,これまで採取している噴出物試料の観察や分析なども検討し,研究課題全体のとりまとめにむけて全力で取り組んでいるところである.
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Causes of Carryover |
本研究の主な調査対象である阿蘇火山中岳では2021年も火山活動が活発化し,同年5月以降,噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)以上に引き上げられるなど,2021年度末までの大部分の期間,安全上の問題から火口周辺域への立入と調査が実施できない事態となり,進捗状況が遅れている.過去の噴火発生履歴を高精度に把握するために,放射性炭素年代測定を実施する予定であったが,現地調査が進んでいないため,試料が得られず,分析を依頼することができていない.次年度以降は,本研究の目的を達成するために必要な噴出物試料や放射性炭素年代測定用試料の発見に努めるとともに,研究補助も活用して課題全体のまとめにむけて全力で取り組む予定である.
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