2020 Fiscal Year Research-status Report
MRIによる積雪内選択流の形成理論に基づく新しい浸透計算スキームの開発
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19K04960
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
勝島 隆史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 (00611922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 聖 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 特別研究員 (80719146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | MRI / 選択流 / フィンガー流 / 積雪モデル / 浸透計算 / Invasion percolation |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、春先の急激な融雪や積雪への降雨による雪崩や融雪洪水、地すべりなどの融雪災害の発生メカニズムの解明と予測技術の高精度化のために、独自開発した最新のMRIによる非破壊測定技術を用いて積雪内部の選択的な水の流れ(選択流)の形成過程を解明することと、気象データから積雪の内部構造や積雪底面からの流出を数値再現する積雪モデルにおいて選択流の振る舞いを取り扱う新しい浸透計算スキームを開発することを目的としたものである。 当該年度は、選択流の形成過程を解明するために、初年度に実施した自然積雪の浸透実験の結果を解析した。MRIにより可視化した選択流の動態と、実験に使用した雪試料に対するX線マイクロCTによる間隙構造の3次元解析の結果とを組み合わせることで、選択流の横方向の広がりは上下の積雪層の毛管力差異に関係することを明らかにした。また、浸透実験に使用するMRIの複数の撮像手法を比較し、湿雪試料に対する各撮像手法の性能の特徴について考察した。更に、積雪モデルでの粒径と粒子形状の表現の精緻化により浸透計算スキームの性能向上を図るために、X線マイクロCTのデータから積雪粒子の粒径や間隙径を計測する手法を応用して、積雪粒子の形状を直接的に表す形状指数により雪質ごとの形状の差異を定量的に示す手法を新たに開発した。これにより、これまで人間の目視により定性的に示していた粒子形状を客観的な手法により定量化することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で使用するMRI装置が設置されている研究所における新型コロナウィルスの感染拡大対策のため、令和元年の2-3月および2年度に予定した浸透実験の実施を中止としたため、自然積雪を用いた浸透実験のデータを新たに追加することが出来なかった。この浸透実験は、選択流の形成過程の解明と浸透計算スキームの開発についての研究を進めるうえで中核をなすものであり、広範な積雪状態における浸透現象を把握するにはデータ数が不足している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の結果、選択流の横方向の広がりと積雪層構造との関係を示すことが出来た。この成果は、現業利用を目的とした1次元積雪モデルの浸透計算スキームにおいて、簡略的な手法により選択流の効果を取り入れるためのカギになるものと考える。今後、この成果に基づき浸透計算スキームの開発を進める。 また、新型コロナウィルスの影響により、浸透実験を実施できない状態が研究初年度から続いている。これまでに得た実験データでは、広範な積雪状態における浸透現象を把握するには不十分であることから、研究期間の延長を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、今年度開催が予定されていた国際学会が中止、国内学会がオンライン開催となり、また、今年度の2~3月の時期に予定した浸透実験の実施を中止とした。そのため、当初の経費の使用予定に挙げていた旅費を大幅に執行しなかった。 次年度においては、引き続き浸透実験の実施や自然積雪を採取するための旅費として使用するとともに、研究期間の延長を検討する。
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