2020 Fiscal Year Research-status Report
道路除雪作業で形成される雪堤の崩れ現象に関係する力学的特性の評価
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19K04973
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
河田 剛毅 長岡工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (50177705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 靖司 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70224673)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 雪堤崩れ / せん断強度 / 層の境界面 / 時間経過 / 含水 / 加圧力 / 粒子構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は路肩に形成される雪堤の崩れ防止対策を考える上で必要となる、雪堤崩れに関わる力学的特性量と各種影響因子の関係を明らかにする。一般に雪堤は複数回の雪の積み上げによる多層構造になっているが、実際の雪堤を使って実験を行うことは現実的に不可能であるため、調査対象部位として、「雪層内部」と「2つの層の境界」の2か所に着目し、それぞれの部位を単純化して模した実験室規模の雪層モデルを使って、主としてせん断強度と影響因子の関係を調べる。せん断強度は荷重と変位を同時に測定できる強度試験装置で測定した。 影響因子については、①初期の雪質・雪性状、②雪堤に積み上げられてからの経過時間、③加圧力(積み上げ高さ分の自重に相当)、④含水状況、の4つを取り上げて調べることにした。このうち①に関する事情として、天然雪は安定して採取すること、および雪質・雪性状を特定の状態に制御することが難しいため、2020年度も雪試料は製氷機による氷を削って作成した人工雪を用いた。この場合、ざらめ雪が最も安定した性状のものとして得られるので、まずは①はざらめ雪で一定として、②~④の影響を調べることとした。 「2つの層の境界」の強度調査に関する改良として、これまで層の境界面が不明瞭であることがデータのばらつきの要因の一つであることが考えられたので、2020年度は2つの雪層の境界面を明瞭化する対策を施した。 また、雪の力学的特性量の変化を粒子構造変化の観点から検討するため、調査対象の試料から薄片試料を作成し、マイクロスコープによる観察画像を粒子解析して、粒径や粒子の結合度合いを定量化することも行った。薄片試料作製の効率化を図るため、2019年度にZ軸ステージとリニアガイドを組合わせた薄片作成装置を作成した。2020年度は更なる効率化のため、この装置の最適な切削条件(切込み量や刃の取り付け角度など)を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「雪層内部」のせん断強度調査について:雪試験片の寸法は2019年度と同じである。2019年度にせん断強度と経過日数の関係はある程度明らかになった(せん断強度は経過日数とともに増加する)ため、2020年度は主に含水状態の影響を調べた。含水条件としては、雪試験片全体を水に浸して保管したものと、まったく水に浸さずに保管したものの2種類を設定した。2019年度は保管中の断熱が不完全で雪試験片の周辺部が融けてしまう不具合があったが、2020年度は断熱方法を改善した結果、その不具合を解消させることができた。結果として、含水させた場合の方が強度が低下する傾向が認められた。但し、比較ベースとなる「含水させない場合の強度」の経過日数による変化の傾向が2019年度とやや異なっていたため、結果の信頼性が不十分である。 「2つの層の境界」のせん断強度調査について:2019年度と同じ2層の雪層モデルを用いて調べた。2019年度に考案した2つの雪層の境界面を明瞭化するための手法を適用した結果、強度測定値のばらつきが小さくなり、これにより、経過日数と強度の関係がより明確になった。具体的に、これまで境界面に1mの積雪相当の加圧力がかかる荷重をかけた条件で、2層目積み上げ後の経過日数が30日までのデータを得ており、日数経過とともに強度が増加する明確な傾向が認められている。また荷重をかけない条件でのデータもいくつか採ったが、現時点では荷重の有無の影響は明らかでない。 粒子観察・解析について:2019年度に製作した薄片作成装置について、最適な切削条件(切込み量や刃の取り付け角度など)を明らかにした。但し、薄片試料の作成効率を大きく向上させることはできなかった。そのため、期待したほど計測データ数を増やすことができず、粒子の結合度合いと日数経過の関係がまだ明確になっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
「雪層内部」のせん断強度調査については、上述のように含水状態の影響調査結果の信頼性が不十分なので、試料の保管方法などを再検討して改善させたい。 「2つの層の境界」のせん断強度調査については、境界面にかかる加圧力の影響調査が不十分なので、もう少しデータ取りを行う。またこれまでのデータから、2層目を積み上げてからの経過日数による分布は、「雪層内部」のせん断強度の経過日数による分布と定量的にかなり似通っていることがわかっている。これは、積み上げてからの経過日数が1週間程度の雪層表面と新たに積み上げた雪の間の結合力は,最初から一体として保存された雪塊の結合力とほとんど変わらないことを示唆する興味深い結果であるので、粒子観察・解析によるアプローチとも合わせて検討したい。さらに「雪層内部」の調査同様に、境界面の含水状態の影響調査も行う予定である。 粒子観察・解析については、現状の薄片作成装置では1個の薄片試料を作成するペースに限界があるので、今後は雪試料の面積を大きくして1回あたりに観測できる面積を増やすことで実質的な計測データを増やす予定である。粒子解析の効率アップのための粒子解析用のソフトについては、必要な機能を持つものとして2つの候補まで絞り込んだが、両者の価格がかなり違うため選定に時間がかかってしまった。これを大至急選定し購入する。 また、新型コロナウィルス感染防止のため、前半は学生が登校禁止になり研究が滞ってしまった。加えて本研究での作業・実験場所は0℃以下の温度の低温室であり、ここは狭く密閉された空間で、換気扇はなく、かつ一定温度に保持する必要上、定期的な換気も困難という具合に感染防止対策が大変難しい環境であるため、研究遂行がどうしても遅れがちになってしまう。今後も感染防止対策を優先せざるを得ず、思うように進捗しない可能性があるが、できる範囲で研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
粒子解析の効率を上げるために導入を予定している粒子解析用ソフトについては、従来、雪氷粒子への適用例がないため、導入前に雪氷粒子での動作検証が必要であった。しかし2019年度は記録的少雪であったため、天然雪での動作検証ができず、検証は2020年度の冬に持ち越しとなってしまった。さらに粒子解析の対象となる雪の雪質は新雪、しまり雪、ざらめ雪と多種にわたるので検証に時間がかかったが、近日中に購入予定である。 「研究実績の概要」の【今後の研究の推進方策】で記述したように、粒子観察・解析用の雪試料の面積を大きくして1回あたりに観測できる面積を増やすことを予定している。そのためには撮影画角をより広くする必要があるが、現有の観察用機器(カメラ、レンズ等)では対応できないので、その更新をする。 冬場の降雪を実験試料として保管するため、野外に設置された20フィートコンテナへの雪入れ作業を業者から行ってもらうための費用を計上していたが、2019年度は記録的少雪であったため実施できなかった。2020年度の降雪状況も未知数であったため、この雪入れ作業は行わず、代わりに製氷機による氷を削って作成した人工雪を主な試料として使うこととした。そこで、異なる雪質の人工雪を作成するため、削った氷の細かさを調整できる削氷機を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)