2019 Fiscal Year Research-status Report
レーダー降雪分類と雲物理過程に基づく新積雪物理量の時空間変化推定手法の開発
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19K04978
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
中井 専人 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 総括主任研究員 (20360365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 明弘 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 主任研究官 (20462525)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レーダー / 降雪 / 雲物理 / 数値気象モデル / 新積雪 / 比表面積 / SSA / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
・サブテーマ1(レーダー観測に基づく降雪分布特性算出アルゴリズムの開発)においては、レーダー電波の反射強度(降水強度を反映)の数10kmスケールの空間分布パターンに基づく分類について、機械学習用のハードウェアを整備するとともに、予備的に、気象庁全国合成レーダーデータを用いた機械学習による分類を行った。その結果、人間による手作業分類に対して機械学習によって正解率94%で再現することに成功した。その理由として、学習画像として降水強度が強く出ていたものを選択したことが効果的だった可能性を指摘した。 ・サブテーマ2(気象モデル改良による雲物理過程を反映した降雪・新積雪物理量の出力)においては、気象庁の数値気象モデルJMA-NHMを改良したモデルを使用し、地上及び上空の雲・降水粒子の量に加えて、降水粒子の成長を表す雲物理過程の変数を出力できるようにし、そのパフォーマンスを調べた。その結果、JPCZの降雪粒子の成長に対して、下層での雲粒捕捉成長の他、雲頂付近での昇華成長が主な成長機構として介在していたという結果が得られた。また、JPCZの外側の領域では、降雪粒子の成長に対して雲粒捕捉過程の比重が大きいことを示唆する結果が得られた。 ・サブテーマ3(新積雪物理量の実測によるレーダー降雪分布特性及び気象モデルの雲物理過程と新積雪物理量との対応の検証)においては、今年度は極端な暖冬のためSSAの観測結果がほとんど得られなったが、既存観測結果を整理し、論文として刊行することができた。BET法を用いた100回を超えるSSA測定の結果、新積雪のSSAは40から140 m^2 kg^-1であること、低気圧性の雲粒付着のない降雪粒子のSSAは小さく、季節風時に一般的な濃密雲粒付き雪片及び霰ではSSAが大きいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・サブテーマ1(レーダー観測に基づく降雪分布特性算出アルゴリズムの開発)については、予備的な処理ながら、数10kmスケールの空間分布パターンに基づく分類に対して機械学習が有効という結果を得ることができ、初年度としては想定した結果が得られたと言える。 ・サブテーマ2(気象モデル改良による雲物理過程を反映した降雪・新積雪物理量の出力)について、『研究実績の概要』に記述した結果は、目的とする気象モデルの改良が問題なく進捗していることを示す。 ・サブテーマ3(新積雪物理量の実測によるレーダー降雪分布特性及び気象モデルの雲物理過程と新積雪物理量との対応の検証)について、『研究実績の概要』に記述した結果は、雪崩の弱層となりやすい降雪粒子をSSAによって識別可能なことを意味し、今後のサブテーマ1及びサブテーマ2の解析及びアルゴリズム検証に対して信頼できることが確認できたといえる。 以上のことから、観測条件による問題はあったもののそれを補うだけの解析の進捗が見られ、全体として、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
・サブテーマ1(レーダー観測に基づく降雪分布特性算出アルゴリズムの開発)について、今後、学習画像とは別の冬季に対して、ここで開発した手法がどの程度の正解率を得られるか調査を進める。また、機械学習のハードウェアを強化して雪氷研における偏波レーダー観測データを用いた降雪系分類に機械学習を適用する予定である。さらに、数km以下の小スケール変動に対する画像解析アルゴリズムの適用についても試みる。 ・サブテーマ2(気象モデル改良による雲物理過程を反映した降雪・新積雪物理量の出力)について、今後、固体粒子数濃度に現れる違いなどについての気温・湿度に対する依存性の他、氷晶生成モデルの妥当性も考慮しつつ、地上降雪の特徴との関連を検討していく予定である。さらに、サブテーマ1の降雪分布特性分類、サブテーマ3の実測値との比較も実施していく。 ・サブテーマ3(新積雪物理量の実測によるレーダー降雪分布特性及び気象モデルの雲物理過程と新積雪物理量との対応の検証)について、今後、SSA観測を実施するとともに、事例として整理したデータセットを作成し、サブテーマ1、2から得られる新積雪物理量推定結果を統計的に評価できるようにする予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19禍のため冬季の出張が中止となった。現状の社会的状況を鑑み、誌上発表やWeb上での公開などに発表をシフトし、投稿料等に使用する。
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Research Products
(15 results)