2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K04982
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高倉 洋礼 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30284483)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 正20面体準結晶 / 近似結晶 / 自己フラックス法 / 結晶育成 / バーグマンクラスター / マッカイクラスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、正20面体準結晶の単準結晶試料を育成するための条件を探索・確立し、純良な単準結晶試料を育成、そして、それらを用いた結晶構造解析により、準結晶の詳細な原子的構造を電子密度レベルで解明することを目的としている。これにより、準結晶の非周期長距離秩序形成のメカニズムと安定性の起源について、構造的知見を得るとともに、物性理解のための構造情報を提供する。特に、最近準結晶で初めて超伝導を示すことが報告されて注目を集めている、Al-Mg-Zn正20面体準結晶の完全な原子的構造の解明を目指す。準結晶の構造解析例の蓄積は、将来的な非周期結晶工学による準結晶の物性制御のための基礎を与えるものである。 R2年度は昨年度に引き続き、Al-Mg-Zn正20面体準結晶とその近似結晶の純良単(準)結晶の育成条件の探索に取り組んだ。昨年度見出されたAl-Mg-Zn系2/1-1/1-1/1近似結晶の単結晶X線構造解析を行い、その原子的構造を明らかにした。さらに、得られた近似結晶の構造から、バーグマンクラスターを内包する菱形30面体クラスターの隣接クラスターの結合様式として、従来近似結晶で見出されているb-, c-linkageだけでなく、a-linkageとb'-linkageの存在が明らかとなった。すでに得られているAl-Mg-Zn系2/1-1/1-1/1近似結晶の単結晶試料について物性測定を行い、0.14Kで超伝導を示すことが分かった。 また、Al-Si-Ru系についても結晶成長を試み、正20面体準結晶に関連した擬マッカイクラスターとminiバーグマンクラスターからなる直方晶系近似結晶を見出した。この直方晶系近似結晶についても単結晶X線構造解析を行い、その原子構造を明らかにすることにより、c1相として知られる立方晶系近似結晶と関連した対称性の低下した近似結晶であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶育成法として、従来の溶融徐冷法による試料作製ではなく構成元素の組成を意図的にずらした自己フラックス法によってAl-Mg-Zn系において純良単結晶の育成を行った結果、まだ、正20面体準結晶の単準結晶育成には成功していないが、今まで正20面体準結晶の近似結晶としては報告例のない新しい2/1-1/1-1/1近似結晶の育成に成功し、単結晶X線構造解析によりその結晶構造を明らかできている。また、現在得られている結晶試料は微小ながら、物性測定により低温で超伝導を示すことを明らかにした。また、この新しい近似結晶の原子構造を詳細に調べることにより、従来近似結晶で見出されているb-, c-linkageだけでなく、a-linkageとb'-linkageの存在が明らかとなり、すでに構造解析が行われているバーグマン型Zn-Mg-Tm正20面体準結晶において見出された構造上の特徴と一致することが明らかとなった。これはAl-Mg-Zn正20面体準結晶の完全な原子的構造の解明に寄与する重要な結果である。Al-Si-Ru系についても結晶成長を試み、正20面体準結晶に関連した擬マッカイクラスターとminiバーグマンクラスターからなる直方晶系近似結晶を見出した。この直方晶系近似結晶についても単結晶X線構造解析を行い、その原子構造を明らかにすることにより、c1相として知られる立方晶系近似結晶と関連して対称性の低下した近似結晶であることが分かった。これらの結果はいずれも、準結晶及び関連結晶の構造的知見を得るとともに、物性理解のための構造情報を提供するという本研究課題の趣旨に沿ったものであり、概ね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Al-Mg-Zn系において、正20面体準結晶について引き続きその形成条件を探るとともに、R1年度に発見した新しい近似結晶の形成する組成や温度の条件を明らかにする必要がある。すでに得られている微小な結晶試料において、物性測定により、低温で超伝導を示すことが明らかとなったが、より精度の高いデータを得るためにはより大きな単結晶試料を測定に用いることが望まれる。探索する組成と温度の範囲を拡大して検討する。そして、より大きな単結晶の育成を試み、得られた単結晶を用いて構造物性を明らかにする。Al-Si-Ru系においてはすでに得られている近似結晶以外に探索の幅を広げ、フラックス法による単結晶の育成条件を確立する。また、それらの原子的構造を単結晶X線構造解析により明らかにし、その半導体的性質と構造の関連を検討する。また、他の合金系のおける結晶成長も試みる。得られた成果については遅滞なく、学会・論文等で適宜発表してゆく。
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Research Products
(10 results)