• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2020 Fiscal Year Research-status Report

結晶方位解析における対数角(回転行列の対数の成分)の有用性

Research Project

Project/Area Number 19K04985
Research InstitutionTokyo Institute of Technology

Principal Investigator

尾中 晋  東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (40194576)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords結晶方位 / 転位組織 / 回転行列 / 対数角 / オイラー角
Outline of Annual Research Achievements

不均一な塑性変形で形成される転位組織は結晶内での方位変化をもたらすが,従来の研究におけるこのような方位変化の解析はスカラー的な回転角度であるミスオリエンテーション角の評価に限られていることが多い.しかし,そのような評価のみでは,変形や回転のテンソル性を踏まえて結晶方位変化の要点を十分に議論することはできない.そこで本研究では,方位変化を示す回転行列の対数を取ることで得られる三つの独立な実数成分,対数角が,回転角の成分であり,材料中の結晶方位変化の本質的な考察を可能にする有用な特性角であることを示し,結晶方位変化の議論に応用する.
本年度は,対数角,そして対数角ベクトルについての考察の応用により,材料中の結晶方位変化と転位組織との関連性を評価するための研究を行った.この目的が達成できれば,構造材料の余寿命評価が非破壊的に可能となり,社会に大きく貢献することができる.そのためには実験による実証が不可欠であり,アルミニウムの微細結晶粒材料を用いて,局所的な塑性変形とそれによる方位変化,転位組織形成を評価した.塑性変形を受ける材料中の同一結晶粒内であっても,結晶粒内の位置の違いによって活動するすべり系に違いが生じ,結晶粒内に転位壁が生じて結晶粒の微細化が起こる場合と結晶粒内の転位壁の消滅による結晶粒の粗大化が起こる場合の両方があり得ることを見出した.このような転位組織の遷移に関する知見を更に積み重ねることによって,材料における機械的性質と微細組織の関連性をより良く理解することができる.このような研究は今後も継続する.本年度の成果は論文として受理され,科研費で得られた成果を広く社会に発信することができた.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

結晶方位変化には材料中の転位組織を評価するために有用な情報が含まれるものの,その情報を扱うためには結晶方位についての測定結果を適切に解析することが必要になる.この方位解析を3次元直交座標に対しての回転の成分性に注目して行うことが本研究の方針になっている.そして,方位変化を示す回転行列の対数を取ることで得られる三つの独立な実数成分,対数角が,ある軸周りのある角度の回転を3次元直交座標における基準軸周りの回転成分へと分解した結果であることを示してきた.
本年度は,材料中の結晶方位変化と転位組織との関連性を評価するための実験的研究を行った.具体的には,超微細結晶粒で構成されるアルミニウムの塑性変形に伴う結晶粒内での方位変化を走査型電子顕微鏡を使ったEBSD方によって詳細に調べた.そして,得られた実験結果を対数角と対数角ベクトルを使って解析して転位密度テンソル成分値の変化を明らかにし,材料中の転位組織の遷移に関する新たな知見を示し得た.この知見を日本金属学会の英文誌で公表し,対数角および対数角ベクトルが確かな概念であることを研究コミュニティと産業界に提示できた.

Strategy for Future Research Activity

材料中の結晶方位変化と転位組織との関連性評価を合理的に行うことができれば,構造材料の余寿命評価を非破壊的に行うことができ,社会に大きく貢献することができる.そこで,これまでに行ってきた対数角,そして対数角ベクトルについての考察,そしてそれらによる材料中の方位変化の理論的解析を更に推進する.この理論的推進のためには実験による実証が不可欠であるため,引き続き実験に注力する割合を高めることを現時点では計画している.具体的には,局所的な塑性変形とそれによる方位変化,転位組織形成を評価するため,単結晶や微細結晶粒材料を対象にした実験を継続する.方位変化の実験的な評価については,これまでの二次元的な面内方位測定に加え,FIB加工の併用による深さ方向での方位変化測定といった三次元的な方位評価も視野に入れた実験が進行中である.
微細結晶粒材料における塑性変形と方位変化は,そこに密度高く含まれる結晶粒界の影響を受けるため,実験結果の解析には多くの因子についての考察が必要になる.多くの成果が得られてきたこれまでの理論的手法に加え,新たな視点からの理論的考察も導入し,この考察をさらなる挑戦として行っていく.

Causes of Carryover

感染症流行の影響により,研究成果の公表や関連研究を調査するための出張が制限され,旅費を執行することができなかった.今後,学会等が開催され,出張に関する制限が緩和されれば,そのために支出する予定にしている.

  • Research Products

    (2 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] SEM/EBSD analysis of grain refinement and coarsening of ultra-fine-grained Al during simple shear deformation2021

    • Author(s)
      R. Matsutani, T. Sakuragi, N. Yamagishi, N. Miyazawa, N. Nakada and S. Onaka
    • Journal Title

      Materials Transactions

      Volume: 62 Pages: -

    • DOI

      10.2320/matertrans.MT-M2021026

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 超微細粒Alのせん断変形前後における組織変化の対数角による評価2020

    • Author(s)
      松谷亮輔,宮澤直己,尾中 晋
    • Organizer
      日本金属学会秋期講演大会

URL: 

Published: 2021-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi