2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K04989
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
仲村 龍介 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70396513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石丸 学 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (00264086)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鉄鋼 / ホウ素 / 拡散 / ミクロ組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
実施項目A「αおよびγ鉄中のボロンの長距離拡散実験」とB「スパッタ堆積によるボロンの異常拡散解明」の二つに取り組んだ. [A-1]純鉄中の長距離拡散実験 結晶粒を粗大(2-3 mm)にした純鉄板にFe-B薄膜を堆積させ,その上からボロンの揮発を防ぐためのAl2O3薄膜を保護層として堆積させた.ガラス真空封入して700-900℃(α鉄)の間で50℃間隔の温度で拡散させた.余計なシグナルを拾わないための二段階スパッタリングを行いながら,深さ方向のボロンの二次イオン強度分布を測定した.得られた拡散係数は10^-17から10^-19 m^2s^-1となり,数少ない文献値よりも7から8桁小さい値となることが新たにわかった.なお,γ純鉄では解析に適する濃度プロファイルは得られなかった. [A-2]合金中の長距離拡散実験 γ相(fcc構造)を安定化させるNiを添加したFe-30at.Ni合金を作製し,[A-1]と同様の手法で拡散係数を求めた.まず結晶粒を粗大化させるための加工・熱処理を行った.数%の均一な引張ひずみを付与した板状試料を真空炉で1300℃まで加熱して冷却したところ,平均粒径が500μm程度に粗大化した.この試料にFe-B薄膜を堆積させて800℃で拡散焼鈍を行った.濃度プロファイルを解析して得られた拡散係数は10^-17 m^2s^-1となった.この値も数少ない文献値よりは5桁ほど小さい.2020年度は温度範囲を拡張してデータ点を拡充する. [B]異常拡散の起こる条件解明 結晶粒を粗大にした純鉄にFe-17at.%B合金をターゲットをスパッタして薄膜を堆積させた.この試料の二次イオン強度分布を単純な一段階スパッタと二段階スパッタリングとで比較した.後者の強度はやや低く検出された.この強度分布の再現性の検証を引き続き進めていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の実施において主要な二次イオン質量分析器に不具合が続き,2019年7月から11月にかけて使用できなかった.復旧後に実質的には3か月ほどしか主要な測定を行うことができなかったのが予期せぬ遅延の理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
実施項目Aは計画通りに遂行する.γFeNi合金におけるデータ点の拡充を進めるとともに.αFeAl合金における実験に着手する.これまで利用していた四重極型の二次イオン質量分析器からより感度に優れる飛行時間型の機種が利用できる見込みであり,信頼性の高いデータの取得が期待できる. 実験項目Bのほうは,室温でスパッタ堆積した試料を飛行時間型の機種で測定して,室温での異常に速い拡散が確からしいかどうかを検証する実験を行う.その結果に応じて,研究計画を検討しなおす可能性も視野に入れる.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で,2020年3月に予定していた大阪大学への出張(実験)が取り消しになったため残額が生じた.翌年度に実施する.
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