2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K04990
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 進補 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10437345)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 液体金属 / 自己拡散 / 相互拡散 / 不純物拡散 / 固有拡散 / 原子半径 / 熱力学的因子 / Darkenの式 |
Outline of Annual Research Achievements |
液体金属の拡散を支配する因子の影響を定量的に明らかにし、拡散係数予測式を構築することを目的とし,以下の意義・重要性の項目について,シアーセルと試料の安定密度による実験を行い,以下の知見を得た. (1)溶質に対する溶媒元素の原子半径比と熱力学的因子による拡散係数(不純物拡散,トレーサー拡散)の整理:2019年度に行った773Kおよび973Kで液体Sn中のSb、Bi、およびInの不純物拡散係数の測定結果を解析した.実験結果から、溶質と溶媒の原子半径比の温度依存性を考慮して、剛体球モデルに基づく予測式を確立し,以下を明らかにした.熱力学的係数と二体分布関数の両方を使用する予測式は、不純物拡散係数と自己拡散係数の比率の温度依存性を表すことができる.573Kから973 Kの実験データと信頼できる参考文献値とを比較すると、前者の予測式の精度は±9%であり、後者の1つは最大で±12%となった.原子半径の温度依存性を、Protopapasの式、モル体積、および散乱回折実験から取得することにより,上記と同じ式の原子半径比を使用して、不純物拡散係数を予測式の同等の精度で算出可能である. Sn中のCuおよびAuの不純物拡散係数測定も同様の方法で,573Kにて測定した.Cuの不純物拡散係数測定結果は、上記予測式で得られる値よりも小さい値となった.今後,これら元素の不純物拡散係数も統一的に予測する方法の確立を試みる. (2)固有拡散と相互拡散の関係:本年度は,相互および固有拡散の同時測定における相互拡散に関する濃度分布解析を確立させることを目的とした.液体Sn-Pb合金の相互および固有拡散の同時測定を行い,相互拡散を表す濃度分布を取得した.その後,相互拡散に関する濃度分布解析において,濃度依存性を考慮するためにSauer-Freise法を用いて測定結果の信頼性を評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和二年度の実施内容として,以下を計画していた.1)不純物・トレーサー拡散(データ解析,論文投稿),2)相互・固有拡散(データ解析,論文執筆),3)温度依存性(実験) 1)について,2019年度に行った773Kおよび973Kで液体Sn中のSb、Bi、およびInの不純物拡散係数の測定結果と本申請課題開始以前に行った573Kでの測定結果を用いてデータ解析を行った.これにより,3)温度依存性の解析も行うことができ,温度依存性についての論文を投稿した.もともと1573Kまでの高温域でも実験を予定していたが,まず,973Kまでで温度依存まで記述できるモデルを示したこと,高温で拡散実験を行っても,中性子散乱実験等での参考データがないこと,また,不純物拡散実験で予想外の興味深いデータが得られたことから,高温域での実験よりも,573KでのAuやCuのSn中の不純物拡散係数測定を優先した. 2)相互・固有拡散の追加測定を行い,データ解析を行った.また,Darkenの式を検討するため,Pbの自己拡散係数測定を行った.この結果,相互拡散係数,固有拡散係数と自己拡散係数の関係は,従来知られていたDarkenの式から差異があることが示唆された.詳細に検討するため,濃度分布測定結果の誤差により生じる相互拡散係数・固有拡散係数の不確かさを解析する方法を検討した.Thermo-calcにより,元素間の相互作用を計算している. 3)上述の通り,温度依存性は973Kまでの温度範囲とした.また,高温測定に対応できるよう測定方法を構築してきた蛍光X線とシアーセル法を組み合わせた方法について,測定データの時系列解析による拡散係数方法を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
1)不純物およびトレーサー拡散係数が,溶質と溶媒の原子半径比と熱力学因子の積に比例するとの式が成立しない不純物元素として,Au,Cuが明らかとなった.2021年度は,これに加えてAlを不純物元素として実験を行い,統一的に理解できるモデルを構築する. 2)不純物拡散において,溶媒にSnを用いてきたが,Snは,融点直上の温度でクラスターを形成することが知られている.この影響を明らかにするため,クラスターを形成しないAlを溶媒として,不純物拡散実験を行う. 3)この3年間のデータを総括し,以下をまとめる. ・溶媒と溶質間における元素の原子半径比と熱力学的因子により拡散係数(不純物拡散,トレーサー拡散)を整理する. ・相互作用(熱力学的因子)による影響を,①トレーサー拡散と固有拡散の関係,②固有拡散と相互拡散の関係、温度依存性に適用し,拡散挙動の統一的な理解をする.
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