2020 Fiscal Year Research-status Report
High-throughput searches for new thermoelectric materials by first-principles calculations and experimental materials informatics
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19K04999
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桂 ゆかり 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (00553760)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 材料インフォマティクス / データベース / 第一原理計算 / 実験データ |
Outline of Annual Research Achievements |
熱と電気を相互変換できる熱電材料は冷却素子や発電装置としての応用が進んでおり、普及には高性能化が必要である。だが熱電特性は相互に絡みあう多数のパラメータに支配されており、母物質依存性と試料依存性が分離されずに研究されてきたため、本質的な特性改善指針を見出すことが困難であった。そこで本研究では、Materials informatic (MI)を用いて、母物質の選定から不純物元素とそのドープ量の選択、合成条件の最適化までを効率化することで、新規熱電材料探索をハイスループットに行う方法論を確立する。このために、本研究者がこれまで開発してきた実験的熱電特性のデータベースStarrydataと、新規開発する Unfolded電子構造データベースと実験記録データベースを使用する。今年度は昨年度に引き続き、独自開発したStarrydata2 webシステムを用いて、過去に出版された論文から熱電特性の温度依存性の実験データの大規模収集に取り組んだ。その結果、7000本以上の論文から集めた30000試料以上の熱電特性データを含む、世界最大規模の実験値のデータセットを得ることができた。このデータを2種類の手法で機械学習したところ、高い熱電特性が予測される化合物のランキングが、機械学習アルゴリズムにより異なることを見出した。また、30種類以上の熱電材料の母物質について、ゼーベック係数を横軸、電気伝導率の対数を縦軸に取ったInverse Jonkerプロットを作成したところ、直線の傾きと切片が母物質によって異なることを見出した。この結果は、第一原理計算の結果だけでは説明できないことから、電子緩和時間などに関係する実験データ固有の情報が含まれていると考えられた。このプロットに基づき、ZTをゼーベック係数の関数として表現する技術を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの研究で行った機械学習は、ニューラルネットワークによる予測とランダムフォレストによる予測で結果が異なることがわかり、機械学習にはアルゴリズムの自由度が大きいことが確認された。今年度のデータ収集により、過去に報告された熱電材料の実験データの大部分をデータベースに収録することができ、このデータセットを用いて熱電材料全体の傾向を解析することができるようになった。そこで、独自の解析プログラムを開発して、ゼーベック係数を横軸、電気伝導率の対数を縦軸に取ったInverse Jonkerプロットを自動作成できる環境を開発した。また、化学組成をベクトル化することにより、母物質の組成に類似した組成の試料を自動抽出する技術を開発した。これにより、30種類以上の熱電材料の母物質のInverse Jonkerプロットを出力し、直線の傾きと切片が母物質によって異なることを見出した。この結果は、第一原理計算とボルツマン方程式から計算した傾きとは一致しないことも多かったことから、第一原理計算に含まれていない、電子緩和時間などのパラメータに関係する情報が含まれていると考えられた。このプロットに基づき、ZTをゼーベック係数の関数として表現する技術を開発した。これらのデータを利用することで、機械学習による予測が改善できると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
熱電特性の大規模実験データから作成したInverse Jonkerプロットと、第一原理計算から求められる電子構造の情報を明示的に取り込むことによって、機械学習による熱電材料予測技術の精度改善を目指す。母物質の電子構造をブリルアンゾーンの大きさに影響されずに比較するため、WIEN2kによる第一原理計算結果の平面波展開から、Unfoldingされた電子構造を可視化するプログラムを開発する。このプログラムを用いて、基本的な物質の電子構造と代表的な熱電材料の電子構造、機械学習から予測された熱電材料の電子構造を比較する。これに基づいて、有望な熱電材料候補を提案するとともに、計算結果と実験データをオープンデータベースとして公開する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で海外出張ができなくなり、旅費が不要となったため、余剰額が発生した。この余剰額は論文からのデータ収集のための派遣社員の雇用に利用することによって、データ収集を加速する。
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