2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment and demonstration of the control of stacking faults for rare-earth based textured high temperature superconducting materials
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19K05006
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
元木 貴則 青山学院大学, 理工学部, 助教 (00781113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下山 淳一 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20251366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 化学拡散制御 / 微細組織 / 後熱処理 / 水蒸気 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類系高温超伝導体(RE123)は90 K級の臨界温度を有することから液体ヘリウムフリーでの高磁場発生応用などに向けて世界的に研究開発が進められている。高磁場応用には、通電方向にRE123の結晶面をそろえた2軸配向組織の形成が不可欠である。本研究課題では、RE123配向体中に不可避的に存在する積層欠陥を、配向性を損なうことなく制御する手法を開発し、高機能化や作製プロセス高速化指針の確立を目的とした。 本年度は、実用化されているRE123配向材料として代表的な2軸配向薄膜・溶融凝固バルク体に対して、後熱処理による積層欠陥制御手法の探索を行った。様々な雰囲気での後熱処理を試みる中で、水蒸気を含む酸素雰囲気中では400℃以下の低温でも配向を乱すことなくRE123材料中に多数の積層欠陥が導入されることを見出した。 2軸配向薄膜について、短時間の水蒸気含有酸素雰囲気での後熱処理によって、低磁場下での臨界電流特性が最大70%向上する結果が得られた。また、低酸素分圧での還元熱処理を追加することで一度生成した積層欠陥を可逆的に消滅させることも可能であることを明らかにした。さらに、生成・消滅した積層欠陥量に関する定量的な評価手法の開発を行った。 大型の疑似単結晶と見なせる溶融凝固バルクは、酸素拡散が極めて遅く、高い超伝導特性をバルク全体に発現させるには数百時間という酸素アニールプロセスが必要である。この溶融凝固バルクに対して、酸素アニールプロセス中に水蒸気を導入することで、超伝導特性を低下させることなく正味の酸素拡散速度が大幅に増大することを明らかにした。これは、バルク体を構成する結晶内部に多数の積層欠陥が導入され、高速拡散パスとして寄与したことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、水蒸気と超伝導相の反応による不純物の生成や超伝導特性の劣化が懸念されたが、雰囲気中に二酸化炭素を含まない純酸素に水蒸気を含有させることで超伝導相分解などの問題は回避可能であることが分かった。水蒸気含有酸素雰囲気下では低温・短時間の熱処理であってもカチオンの移動を伴う積層欠陥が多数生成することを見出だした。これにより、本年度の目標であった薄膜材料における臨界電流特性の高機能化を達成した。また、水蒸気分圧・温度・時間の関数として導入される積層欠陥量を半定量的に明らかにした。さらに、大型の疑似単結晶と見なせる溶融凝固バルク材料に対しても水蒸気含有雰囲気におけるアニールがプロセス高速化に極めて有効な知見が得られている。数百時間を要していた酸素アニールプロセスを大幅に短縮できる可能性を強く示唆しており、今後さらに実用材料プロセスへの展開が見通せるフェーズにあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
系統的な条件探索や熱処理条件の最適化を行うことで、薄膜材料・溶融凝固バルクに対する積層欠陥導入効果の解明と高機能化・プロセス高速化を引き続き推進する。さらに、欠陥のほとんどない単結晶体を対象として積層欠陥生成・消滅機構の解明に関する研究を行い、積層欠陥の磁束ピンニングへの寄与を定量的に明らかにすることを目指す。また、複数の企業が既に実用材料として商用化している高温超伝導体材料に対しても、本研究課題の積層欠陥制御による高機能化が普遍的に適用可能であるか実証していきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、設計中の評価装置の発注が年度内に間に合わず次年度に持ち越しになったこと、一部旅費・学会参加費について学内の補助を受けられたことが挙げられる。次年度の使用計画については、主に臨界電流評価装置の作製、研究用の原材料や消耗品の購入、学会参加費旅費、論文投稿料に充てる。
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