2021 Fiscal Year Research-status Report
Basic study for application of narrow gap oxide semiconductors with zinc blende structure
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19K05008
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
喜多 正雄 富山高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00413758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸化物半導体 / 閃亜鉛鉱型関連構造 / ナローギャップ / ミストCVD |
Outline of Annual Research Achievements |
Cu3VO4は立方晶ダイヤモンド(閃亜鉛鉱)型関連構造を有し,バンドギャップが1.14 eVと近赤外領域にあり,太陽電池の光吸収層などとして高いポテンシャルを秘めた材料であるが,詳細な基礎物性は明らかになっていない.本研究課題ではCu3VO4のデバイス利用に向けた基礎知見を構築することを目的とし,令和元年度にミストCVD法によるCu3VO4薄膜の作製を行い,次年度以降にCu3VO4の光学的,電気的性質を明らかにすることを計画としていた. ミストCVD法は溶質を溶解させた溶媒をミスト化し,ミストをキャリアガス・希釈ガスによって加熱された基板上に輸送して反応させるという非真空プロセスである.加熱反応部はホットウォール方式を適用し,電気炉内に無アルカリガラス基板を配置して目的温度まで加熱し,成膜を行なった.令和元年度は溶質として酢酸銅(Ⅱ)-水和物 (Cu(CH3COO)2),バナジルアセチルアセテート(C10H14O5V)を用い,添加物として塩酸,溶媒としてメタノールに超純水5~15vol%を加えた混合溶液を用いて,反応温度が400~450℃でCu3VO4薄膜を得ることに成功した.しかしながら,得られたCu3VO4薄膜の面積が特性評価に必要な面積に達していなかったため,令和2年度はミスト供給管の内径を8mmから12mmに拡大することにより薄膜の面積拡大を試み流速分布の解析からミスト平均流束(単位面積,単位時間あたりにガス供給管内を通過するミストの量)の制御がCu3VO4薄膜を形成するために重要であることを明らかにした.しかし,Cu3VO4単相薄膜が得られる条件は非常に狭く,金属Cuが生成されることが問題となっていた.令和3年度は,添加物として塩酸より酸化力の強い硝酸を用いることにより,金属銅の生成を抑え,再現性良くCu3VO4単相薄膜の成膜に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの実験では添加物に塩酸を用いて溶質を完全に溶解させていたが,金属Cuが生成されてしまうことが問題となっていた.添加物を硝酸にすることによって金属Cuの生成を抑制することに成功したが,この条件を見つけるのに時間がかかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該年度に得た学術的知見に基づき、最適化された成膜条件でミストCVD法によりCu3VO4薄膜を成膜し、得られた薄膜の光学的と電気的性質の測定を行う.また更なる装置の改良も行う.これまでは窒素フローで成膜を行っていたが,銅とバナジウムの価数を制御することが困難であった.そこで酸素を導入するガスラインを加えることによって,より精度よく酸素分圧を制御し,1価の銅と5価のバナジウムが得られる条件での成膜を目指す. また,電気的特性については,p型伝導はCu欠損によって,n型伝導はバナジウムサイトにモリブテンをドープすることによってそれぞれの伝導の発現を目指す.これらの特性はVan der Pauw 法とHall効果測定などにより明らかにする.
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Causes of Carryover |
コロナの影響で国際学会へ参加する旅費を使用していないことと,Cu3VO4単相の作成に時間を要したため,次年度使用額が生じた.次年度は国際学会での発表と物性調査の用途に使用予定である.
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