2020 Fiscal Year Research-status Report
シリケート化合物による機能性強誘電体材料の創製と量子ビーム解析
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19K05010
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
石川 喜久 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 研究員 (30772579)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 強誘電体 / 中性子回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリケート化合物ABSi2O7(A=K, Rb, etc, B=Nb, Ta)はNbO6八面体に由来する変位型強誘電体である。基本構造にNbO6八 面体とSiO4四面体があり、これらが頂点共有ネットワークを形成することにより大きな空隙を持つことを特徴とする。 結晶構造から予想されるKNbSi2O7の電気物性として、格子を形成する多面体ネットワークがワイドバンドギャップを担い、大きな空隙のあいだに配置されるK+カチオンは高い移動自由度をもつことが考えられる。本研究では、量子 ビームによるABSi2O7の強誘電性及びイオン導電性発現機構を解明し、高機能性強誘電体の創製に展開することを目的とする。 2020年度は、本課題の対象物質であるABSi2O7のイオン電導性の向上を目指し、Liをドープした結晶の合成を進めた。 使用したLiCO3はK+に対して融点が低く、KNbSi2O7と比してLi+の欠損が大きくなるため、X線回折の結果より従来の作成方法では未反応の母物質であるSiO2が残存することが判明した。本年度はKNbSi2O7にLiをドープした試料を作成し、イオン電導性の発現について検討を進める予定である。 開発を進めている新規アルゴリズムについて、より高精度な結晶構造因子を得るためのプログラムの作成を進めた。具体的には結晶構造解析における吸収補正に着目し、方向余弦を加味した計算を付加する補正プログラムを作成した。また、溶融結晶中に単結晶が成長する可能性があり、これらの測定、解析のための補助的なプログラムについて新たに作成を行なった。今後、複数のイオン導電性試料に対して適用し、検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実施計画である (1) KNbSi2O7の試料合成および(2) 新規MEM解析手法の開発については当初予定通りに進められている。 一方で、イオン電導性の向上を目指すカチオン置換試料の合成について溶融時の欠損により期待通りの試料にならないことが判明した。固溶体作成時の欠損を加味し、カチオンの秤量を増やすことによる試料合成を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、引き続き A+カチオンの置換試料の合成を進め, 量子ビーム測定に必要となる試料作製を行う。 得られた試料について、誘電率測定による物性を検討し、粉末中性子回折装置を用いた低温から高温度までの回折実験を実施する。得られたデータに対して、精密構造解析を通してK+カチオンの熱的挙動の解明を行う予定である.
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Causes of Carryover |
COVID-19により2020年度に発表を予定していた国際学会が延期となったため、旅費が予定額より少額であった。本年度は、中性子回折実験で用いる機器の購入および研究成果の対外発表などで使用する予定である。
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Research Products
(3 results)