2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of extremely facile method for surface modification and coating
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19K05011
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
鈴木 昇 宇都宮大学, 工学部, 教授 (40134259)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 表面改質 / シランカップリング剤 / ロータリーエバポレーター / シリカコーティング |
Outline of Annual Research Achievements |
固体・粉体材料の高機能化のための表面改質・コーティング技術が多くの分野で実施されている。セラミックス等の酸化物の粉体材料を有機液体・高分子に分散させるには,表面をカップリング剤で表面処理し有機基を導入することで疎水性に改質する必要がある。また,化粧品顔料としてのナノ酸化チタン等は,不活性なシリカ等でコーティングし,触媒活性を抑制している。表面改質やナノコーティングの一般的手法は手順が複雑で工程が多いという課題がある。本研究では,粉体の迅速・簡便な表面改質・コーティング方法(究極的には“まぜるだけ&ワンポット”)を目指し,試料表面を被覆するために必要な量の処理剤を,処理粉体を浸す程度の有機溶媒に溶解し,粉体とともにナスフラスコに入れ,ロータリーエバポレーター法(RE法)で溶媒を留去(真空蒸留)する方法を提案し,その有効性を検討した。 鉄微粒子(CFe)のオクタデシルトリエトキシシラン(ODTES)処理では,表面被覆に必要な微量のODTESを用い,RE法での疎水化が可能であることを再確認した。さらに,酸化亜鉛粉体(ZnO)の疎水化処理では,表面単分子膜を形成する必要最低限の処理剤量(単分子層相当量)に対する比を変化させて検討し,ODTESでは単分子層相当量での疎水化が可能であった。また,反応性の高いオクタデシルトリメトキシシラン(ODTMS)処理でも同様であった。酸化チタン粉体(TiO2)の疎水化処理では反応性の高いODTMSおよびオクタデシルホスホン酸(ODP)を使用することで,RE法が有効性であることを確認した。 一方,テトラエトキシシラン(TEOS)を用いたZnOのシリカコーティング処理では,RE法の有効性が認められなかった。この原因として液中でのシリカ粒子生成反応が優先的に進行したためと考えている。今後は,TEOS以外の試薬や処理条件をさらに検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ZnOのシランカップリング剤処理:ODTES処理での詳細な検討を行い,以下のことが明らかにした。(1)ナノ粒子表面を単分子層で被覆するための最低限の処理剤量(単分子層相当量)での表面処理がRE法で可能であることを確認した。処理剤量を単分子層相当量の半分にすると疎水化の程度が低くなった。また,処理剤量を単分子層相当量の2倍を用いた結果,疎水化が低下した。これはシランカップリング剤処理における新たな発見であり,表面2層膜(2分子層)の形成が考えられる。なお,単分子層相当量での処理試料をあえて洗浄した結果,その疎水化の程度が向上し,その原因として表面修飾膜の秩序化を考えている。(2)溶媒として反応で生成する物質と同じエタノールを溶媒として用いたが,疎水性の高いヘキサンを用いて処理した結果,両者に違いは認められなかった。(3)反応性の高いODTMSを用いた結果,ODTESと同等の結果が得られた。 2)TiO2の疏水化処理:TiO2のODTES処理では十分な疎水化が進行しないことが認められたため,反応速度の速いODTMSおよびでオクタデシルホスホン酸(ODP)で処理した結果,ZnOのODTES処理と同様な疎水化が達成された。 3)ZnOに関する研究をより詳細に進めたため,CeO2のODTES処理および親水性処理剤であるアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)に進めなかったので,これを次年度に実施する。 4)シリカコーティング:所定のシリカ層の厚さに相当する量のTEOSを用いたゾル-ゲル法シリカコーティングをRE法で行い,その有効性を検討した結果,シリカのみの粒子が多く生成し,均一な表面シリカ層が形成されないことが認められた。この結果に基づき,他の試薬を用いた方法を検討すること,あるいはシリカコーティングへの応用を断念し,シランカップリング剤処理の検討に集中することを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)シランカップリング剤処理:CeO2粉体のODTES表面疎水化処理,および親水性のカップリング剤でのRE法の有効性を確認するためZnO,TiO2,CeO2のAPTEOS処理を行い,最適化を検討する。特に後者の表面正常評価方法は難しいが,アミノ基の定量評価を元素分析(窒素),ゼータ電位およびX線光電子分光法等で行う。 2)RE法シリカコーティング技術の開発:ZnOあるいはTiO2を試料とし,処理剤には当初TEOSを用いるが,場合によってポリジエトキシシロキサン(PDES)あるいはTEOSと他のシランカップリング剤等との混合系を検討する。これらの方法でのコーティングが成功した場合には,その方法を金属ナノ粒子に応用するとともに,シリカコーティング後の疎水化処理(ODTES等)といった連続二段階処理の開発に進む。ただし,RE法シリカコーティングの有効性が確認できない場合には,適切な段階で判断し,次の3)に進む。 3)連続処理システムの構築:工業的実用化を目指した連続処理システムの検討を開始し,RE法での結果を基に,装置を設計・製作する。装置は,スラリー調整→スラリーポンプ→テフロンチューブ反応管(加熱,マイクロ波又は超音波処理)→真空又は減圧(2019年度購入のドライアスピレーターを転用し圧力調整する)のシステムであり,それを内製する。初期にはZnOのアルコキシシラン処理の連続法を検討する。 4)2021年度は,上記2020年度の結果を基に,連続法の最適条件を明らかにする。因子としては,試料および処理剤の供給速度,温度,排気圧力とし,最終的には数種の試料(酸化物粉体およびシリカコーティング試料)を対象とし,個々の資料での最適条件を明らかにする。
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