2019 Fiscal Year Research-status Report
ダイヤモンド積層構造の拡張欠陥類と格子歪みの状態分析:高品質デバイスを目指し て
Project/Area Number |
19K05023
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
坪内 信輝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (10357535)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 半導体デバイス / ホモエピ成長 / 多層構造 / 格子歪 / 結晶性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ダイヤモンドデバイス創成に繋がる高品質なダイヤモンドエピ膜成長を実現するための手掛かりを得ることを目的としている。具体的には、プラズマ気相合成法によるダイヤモンド積層構造の作成の際に生じる欠陥類の形態と、これらに関係する局所歪みを微視的スケールで詳細に観察、評価することにより、結晶性向上のための手掛かりを得ることを目指す。初年度は対象となる試料の準備を主として行った。具体的には、プラズマ気相合成装置を用いて単結晶ダイヤモンド積層構造や自立膜の作製を行った。積層構造の基礎としての2層構造の作製から開始した。窒素含有の高温高圧合成Ib型単結晶ダイヤモンド基板上にBドープのホモエピタキシャル膜成長を行った。成長後に走査電子顕微鏡、ノマルスキー顕微鏡、レーザー顕微鏡等を用いたモフォロジー観察を行ったところ、成長中に格子歪を誘起するドーム形状の成長欠陥や異常成長粒子等の発生を認めた。前者は後者の10倍程度の大きさ(スケール)を有することを見出した。このことは前者の成長速度が後者よりも大きいことを意味することから結晶性低下への悪影響が大きいと判断された。さらに、結晶成長用の基板用途としての自立板の形成に必要なイオン照射プロセスを実施した。モフォロジー等の基本観察の他、結晶性評価としてラマン散乱と蛍光測定を行った。その結果、イオン照射後の成長用基板においてダイヤモンドのLOフォノンピークの喪失(熱処理後においても強度の大幅減少、半値幅の増大)と幅広で高強度な蛍光バンドの発生を認めた。これは本プロセスに起因して生じた歪等による結晶性の低下を示唆する。さらに収束イオンビーム加工によるダイヤモンドに適合した透過電子顕微鏡観察用の試料作製技術の検討を行った。以上の得られた結果は次年度以降の研究実施のための重要な指針となり得ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はプラズマ気相合成装置によるダイヤモンドエピ低速成長と基板用の高速成長を行い、成長後の表面の形態観察による欠陥評価を行った。それと同時に基板用厚膜の自立板形成のために必要なイオン照射プロセスを行い、それによって誘起される格子乱れ等の評価を行った。さらに収束イオンビーム加工によるダイヤモンドに適合した透過電子顕微鏡観察用の試料作製技術の検討を行った。これらの結晶成長から結晶性評価にわたる一連の実験は、その工程数の多さから典型的工程においても装置の調整や小さな不具合、外部装置使用に関するスケジュール調整等がいくつか起こると想定外の遅延が生じる。本年度は、このような試料作製と結晶性評価に当初想定より時間を要したため若干の遅れが生じているが、今のところ全体的な計画への影響はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
自立板形成用のイオン照射を行った単結晶板上に、窒素ドープ高速エピタキシャル厚膜を成させ自立板の形成を行う。作成した自立板の結晶性の評価を、各種光学的手法を用いて行う。また、Bドープのホモエピタキシャル膜の成長中に発生し、高品質成長を阻害する成長欠陥の詳細構造を、透過電子顕微鏡による欠陥形態観察により明らかにするとともに、より小さな空間スケールでの歪空間分布評価に向けた準備を引き続き行う予定である。
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Causes of Carryover |
試料作製と評価の一連の工程に時間を要したため、それに関連して外部装置使用の機会が減った。また、当初予算に対する減額や外部装置使用料の当初からの料金体系改定も加わり節約の必要性が生じた。また、当初予定になかった他テーマとの共通部分のいくつかの事項について、本研究費と別途で一部賄うことが出来た。このような事情から次年度使用額が生じましたが、翌年度は引き続き外部共用施設の使用を中心として必要な実験研究を行っていく予定です。
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Research Products
(2 results)