2020 Fiscal Year Research-status Report
相変化材料とVO2の複合化による応力印加VO2結晶転移温度制御
Project/Area Number |
19K05024
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
桑原 正史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 上級主任研究員 (60356954)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | VO2 / GST225 / 結晶転移温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
VO2とGeSbTeのハイブリッド化により、VO2の金属-絶縁体の転移温度を制御することを目的として研究を進めた。VO2は、通常 約70℃で金属-絶縁体転移をすることが知られており、転移温度以下で絶縁体、それ以上で金属となる。しかしながら、揮発性であること、転移温度の70℃は、人の生活温度と比べると高温であることから、なかなか実用化されないのが現状である。転移温度の制御が可能となれば、生活への応用が進むと予想される。 これまで我々は、VO2の転移温度を制御する方法を模索してきた。その中でVO2に応力を加えることで転移温度が制御可能であることを知り、簡便にVO2に応力を加える方 法を模索した。また、我々は、光記録の材料を長年研究しており、その中の一つとして実用化されているGeSbTeの225組成(GST)に注目した。光記録では、この材料の結晶―アモルファスを制御することにより、書き込み、消去を行っているのであるが、結晶―アモルファスの転移において、大きな体積変化(アモルファスから結晶 に転移する際には、7%程度の体積収縮)を起こすことが知られている。したがって、この体積収縮を利用すれば、VO2に応力がかけられ、ひいてはVO2の転移温度制御が可能ではと考えた。そこで、基礎的な実験として、アルミナ基板上にC軸配向のVO2を作製し、その上にGSTを堆積した試料を用意した。光学的、電気的にこの試料の転移温度を測定したところ、VO2-アモルファスGSTの系では、数℃の転移温度低下が見られ、VO2-結晶GSTの系では、10℃から数十℃の低下が観察された。応力が、VO2の転移温度に大きな変化をもたらすことが証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの影響により、試料作製で協力していただいている東海大の稼働率低下、また協力者であった海外の研究者が研究所を退職し、民間企業に移ったため、これまでのような協力が得られなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの収束も見えており、また東海大では研究が通常状態となったため、VO2試料の作製、供給は問題なく進むと考えられる。また、東海大では新たに修士の学生も参画することになり、より研究が加速すると考えている。さらに、大きな応力をかけられる材料を探索していたところ、東北大で開発された新しい相変化材料に着目した。結晶ー結晶転移であるが、体積変化率として、20%程度が見込まれ、VO2にかけられる応力はGST 225より非常に大きなものとなる。東北大とはすでに協力体制を築いたため、2021年度はこの新しい相変化材料で研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度は、コロナの影響により、旅費の不使用(自身と協力者)、研究進捗の遅延などがあり、計画通りの研究ができなかったのが原因。今年度は、協力していただいている東海大、東北大の情報をもとにこちらで薄膜の作製を行う予定。その際に必要な基板(アルミナ単結晶基板など)を購入する。
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