2021 Fiscal Year Research-status Report
相変化材料とVO2の複合化による応力印加VO2結晶転移温度制御
Project/Area Number |
19K05024
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
桑原 正史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, センシングシステム研究センター, 上級主任研究員 (60356954)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 二酸化バナジウム / 相変化材料 / 応力印加 / 結晶転移温度制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化バナジウム(VO2)は、65℃以下で絶縁体、65℃以上で金属という相転移が起こるユニークな材料である。調光窓や電気メモリーへの応用を目指し、多くの研究例が存在する。しかしながら、相転移温度が65℃と比較的高い温度であること、揮発性であることから実用化が困難である。この問題を解決するために、元素添加などの試みが行われているが、それによってVO2の特性が低下するという問題があった。これを解決するため、我々は応力印加による転移温度制御に注目し、相変化材料が応力印加に適切ではという考えに至った。すなわち、代表的な相変化材料であるGeSbTe(GST)はアモルファス→結晶に相変化する際、体積変化として7%程度の縮小が報告されている。これによって応力を印加することを考えた、さらに、GSTは光ディスクや電気メモリーの記録材料として実用化されており、アモルファスから結晶の制御が可能な材料である。すなわち、2つの相を制御することにより、VO2への応力印加仔魚が可能となり、強いてはVO2の転移温度も制御可能ではと考えた。本研究では、VO2へのGST成膜、アモルファス→結晶の転移により、どの程度VO2の結晶転移温度が変化するのか、またそのメカニズムは応力によるものなのかを研究課題として進めた。また本研究では、東海大の沖村教授から、VO2膜の提供や電気抵抗の測定の実行といった研究協力を仰いだ。これまで光反射強度の測定で、VO2の結晶転移温度を測定していたが、電気抵抗測定も行えるようになり、GSTのアモルファス→結晶の相変化に伴い、VO2の結晶転移温度も数℃低下したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナの影響が大きく、在宅勤務や協力者の沖村教授の学生の通学制限など実験ができない状況が続いた。また、私自身、職場の都合上研究現場を離れていたこともあり、進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの影響も少なくなりつつあり、また私自身2022年度から研究現場に復帰したことから、研究は昨年度より進展すると考えている。これまで、GSTのアモルファス→結晶の相変化にい伴うVO2の結晶転移温度変化を見てきた。結晶→アモルファスの相変化は、GSTの融点以上に加熱し、急冷することが必要であり、これまでの設備ではこんなんであった。今年度は代表者の組織である産総研所有のパルスレーザー用いて結晶→アモルファスの相変化誘起が可能になると考えられ、それによるVO2の結晶転移温度の変化を捉える予定である。ただし、パルスレーザーの波長、照射時間、パルス幅といったパラメーターを変化させ、最適な条件を見出す必要があると考えている。またこれまでGSTとVO2の膜厚比によりVO2の結晶転移温度が変化することがわかってきており。大きな転移温度の変化には最適な膜厚比が存在すると思われるので、その最適な膜厚比を求めることも今後の研究課題の1つである。後、アモルファス→結晶の応力印加(圧縮応力)により、VO2の転移温度は低下するのであるが、そのメカニズム(VO2のc軸がどの程度伸縮しているのか)をX線回折などで明らかにしていく所存である。
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Causes of Carryover |
コロナの状況の下、学会出席、東海大での実験や打ち合わせ、外部分析依頼などといった研究活動が滞ったため、2021年度は予算の使用が滞った。本来であれば2021年度で本研究は終了であったが、上記状況により1年間の延長を申請した。2022年度予算は、構造分析の外部依頼、学会出席で使用予定となっている。
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