2020 Fiscal Year Research-status Report
精密な時分割PDF解析と3次元構造構築に基づく硫化物ガラスの液相合成機構の解明
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19K05025
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
尾原 幸治 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 主幹研究員 (00625486)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 固体電解質 / 液相合成 / 時分割PDF解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新しい分光技術により得られる超高強度X線(ピンクビームと呼ばれる)を非晶質材料のPDF解析へ適用し、秒オーダーで十分な統計精度の時分割PDFデータ取得を可能とする技術確立と、その技術を全固体電池用硫化物固体電解質の液相合成プロセス観察へ適用し、その機構を解明することを目的としている。昨年度は「ピンクビームの非晶質PDF解析への適用」を遂行し、プリズムとスリットの組合せにより、安定相の石英ガラスで従来と同等のPDF解析を数ミリ秒で得られることを報告した。しかしながら、硫化物固体電解質(ガラス)は準安定相であるため、高強度のピンクビームを照射すると照射部分で結晶化が起こる問題が発生した。 そこで、SPring-8の従来の高強度X線を用いた時分割PDF解析によって、硫化物ガラスの液相合成過程の直接観察を試みた。統計精度に課題は残るものの、10秒毎のデータ取得にて異なる溶媒における合成反応を確認し、溶液中の錯体構造の安定性と固体電解質生成速度の相関性を明らかにした。液相合成において、硫化物固体電解質はアセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチルの順で、イオン伝導率が高くなる。PDF解析により硫化物固体電解質特有の2.0 Aに存在するピークの形成について時間依存性を評価したところ、イオン伝導率が高いものほど固体電解質も早い段階で形成される傾向にあった。 当該内容は、Physica Status SolidiB: Basic Solid State Physics誌(2020, Vol. 257, 2070041 )にて掲載された。また、同誌のInside Front Cover Pictureにも選定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本開発手法により、液相合成プロセスの乾燥過程観察についても実施できている。この過程観察も含め、合成方法の最適化の評価および提案ができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、次の課題として固体電解質の大気暴露過程の観察を同手法により実施予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はCOVID-19の影響により旅費の使用が大幅に減少した。次年度の物品費や論文投稿費にて使用する。
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