2019 Fiscal Year Research-status Report
実験ならびに数値解析による異種金属電磁圧接界面形成機構の解明と接合条件の確立
Project/Area Number |
19K05028
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
熊井 真次 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00178055)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 異種金属接合 / 衝撃圧接 / 電磁圧接 / 接合界面形成機構 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、実験的手法ならびに数値解析的手法の両アプローチによって、電磁力を駆動力として衝撃圧接した異種金属接合界面の形成機構を解明し、強固で信頼性に富む異種金属接合材を得るための学術的基盤を確立することを目標としている。 本研究では、電磁圧接によって、Al/Cu、Al/Fe、Al/Ni、Cu/Ni等の異種金属接合を実施し、得られた接合界面の組織、組成、接合強度を実験的に観察・解析・評価する。また、これら実験と並行して、電磁圧接過程を構成する(Ⅰ)電磁力による異種金属の衝突、(Ⅱ)衝突点からのメタルジェットの放出と波状界面の生成、(Ⅲ)接合界面での温度上昇、(Ⅳ)接合界面での冷却、(Ⅴ)接合界面での合金化領域あるいは中間層の生成の過程を、Emag-Mechanical、SPHならびにOpenFOAMの3種類の数値解析手法を連結してシミュレーションする。そして、数値解析で得られた、極短時間の内に起こる接合界面近傍の物質移動、温度変化に関する知見に基づいて、最終的な接合界面形態を予測し、これを実際に得られた接合界面と比較する。 本年度の実験的アプローチによる成果は、Al、Cu、Fe、Ni等の金属板を供試材とし、各種異種金属電磁圧接材を作製したことである。板の厚さ、充電電圧、接合に供する板の設置時の間隙等の接合条件を最適化することで、Al/Al、Cu/Cuの同種接合材、Al/Cu、Al/Ni、Al/Fe、Cu/Ni等の異種金属接合材を作製し、これらの接合界面組織を観察することができた。 一方、数値解析的アプローチによる成果は、電磁圧接過程を構成する(Ⅰ)~(Ⅴ)の過程の内の(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)について、Emag-Mechanical、SPHの2種類の数値解析手法を連結してシミュレーションしたことである。これらはいずれも今後の研究推敲において極めて重要な成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず実験的アプローチとして、Flyer plateに、Al、Cuを、Parent plateに、Al、Cu、Ni、Feを使用して電磁圧接試験を行った。電磁圧接装置のワンターンコイル上に間隙を設けてFlyer plateとParent plateを平行に設置し、放電回路を用いて種々の放電エネルギー条件でコイルに大電流を流し電磁力を発生させ、Flyer plateとParent plateを傾斜衝突させて各種の異種金属電磁圧接材を作製することができた。得られた接合材について組織観察を行い、一部の接合材においては引張せん断試験を実施して、接合界面組織と接合強度の関係を調べることができた。 数値解析的アプローチに関しては、まず電磁圧接装置を電気回路で模擬し、Emag-Mechanical連成解析法を用いたModel 1によって、時々刻々と変化するコイルに流れる放電電流、発生する磁場、電磁力を求めるともに、この電磁力によって引き起こされるFlyer plateの変形を求めた。これを相互に繰り返すことによって、Flyer plateがParent plateへ傾斜衝突する過程を再現し、衝突速度Vと衝突角度βを算出した。次に得られた衝突速度Vと衝突角度βを初期条件として、粒子法の一種であるSPH法(Smoothed Particle Hydrodynamics法)を用いたModel 2によってメタルジェットの放出、波状界面の形成過程、接合界面での温度変化を再現することができた。 このように初年度において、実験的アプローチ、数値解析的アプローチの両基本的手法を確立することができ、今後の研究展開に有効であることが確認できた。よって、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度実施した研究によって実験的アプローチ、数値解析的アプローチの両基本的手法を確立することができた。 今後は、実験的アプローチに関しては、接合界面に生成した波状界面組織の波長や波高、中間層の量や厚さ等に関する定量的評価ならびに組成分析を進めることを計画している。また、得られた各種接合材について、主として引張せん断試験による接合強度の評価ならびに接合界面近傍の硬さ変化を行う予定である。 また、数値解析的アプローチに関しては、本年度の研究では、主として衝突中の接合界面での圧力上昇ならびに温度上昇について解析を実施したが、我々が実際に観察しているのは、その後室温まで冷却された接合界面である。よって、数値解析による冷却過程の再現を加えなければ、シミュレーション結果と実験結果を直接比較することはできない。 このようなことから、今後は、電磁圧接過程を構成する(Ⅰ)電磁力による異種金属の衝突、(Ⅱ)衝突点からのメタルジェットの放出と波状界面の生成、(Ⅲ)接合界面での温度上昇、(Ⅳ)接合界面での冷却、(Ⅴ)接合界面での合金化領域あるいは中間層の生成の過程の内、最後の(Ⅳ)接合界面での冷却、(Ⅴ)接合界面での合金化領域あるいは中間層の生成の過程に重点を置き、これらの過程をOpenFOAMを用いて数値解析することによって、シミュレーション結果と実験結果を直接比較できるようにする。
|
Causes of Carryover |
本年度は実験条件の確立により、実験用素材等の消費量が少なかった。また、関連する国内・国際会議においては、他の研究テーマの予算で旅費や滞在費が賄えたため、当該研究費用を用いての学会発表を行わなかった。これに対し、次年度は本研究課題の費用を用いて複数の関連する国内・国際会議への参加を予定しており、かつ数値解析用ソフトライセンスの更新等に費用を支出する必要性がある。よって、このような事情から本年度の使用計画を見直し、次年度へ繰り越したため、次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(11 results)