2019 Fiscal Year Research-status Report
毛管数によるミクロスケール樹脂浸透挙動を考慮した繊維織布浸透性マルチスケール評価
Project/Area Number |
19K05038
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
斉藤 博嗣 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70367457)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 浸透性 / 繊維強化プラスチック / 毛管数 / マルチスケール評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,固液間の表面張力および樹脂の粘性力の比としてあらわされる毛管数をミクロスケールの樹脂浸透挙動をあらわすパラメータとして,毛管数がマクロスケールで評価される繊維に対する樹脂浸透性の独立した影響因子である可能性を実験的に評価,検証することを目的とした.同一の繊維基材に対し,異なる樹脂を浸透させる際の毛管数が一致する条件を導くため,本取り組みでは毛管数のパラメータを温度依存項と圧力依存項に分けて検討することとした.3種類の異なる樹脂について,温度に対する粘度,表面張力の関係をそれぞれ求め,異なる樹脂間で温度依存項の値が一致する温度条件を各樹脂に対し求めた.続いて,温度依存項が一致する温度条件下において,各樹脂を用いた浸透性評価試験をおこない,圧力依存項である樹脂流速が一致する圧力条件を各樹脂についてそれぞれ実験的に求めた.その際に,多孔質体における樹脂流速をあらわすKozeny-Carman式を比較対象および樹脂流速の予測式として用いた.これらの取り組みにより,異なる樹脂間において,温度依存項と圧力依存項が一致し,すなわち毛管数が一意の値となる条件を1つ見つけることができた.同条件下において,異なる樹脂を同一の繊維基材に浸透させる浸透性評価試験をおこなった結果,毛管数が一意の値となった場合,浸透性もほぼ同一値を示すことが実験的に明らかとなった.これは当初計画した目的にかなり近づいた結果となる.本取り組みでは,これを第一段階の成果として日本複合材料学会誌に投稿し,厳重な審査を経て掲載された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画として挙げた,項目(1)である毛管数を構成するパラメータのうち,温度変化に伴う樹脂粘度および表面張力,接触角を,樹脂別に実験的に求めること,および項目(2)である温度依存物性を樹脂別に求め,その値が一致する温度を各樹脂についてそれぞれ求めることにより,温度依存項が一致する樹脂別の温度条件を求めることについて,実験結果が当初計画より早く得られたため,2021年度を予定していた項目(3)の一部である,温度依存項が一致する樹脂別の温度条件下で,各樹脂の樹脂圧力と樹脂流速の相関性を実験的に求めること,および項目(4)の一部である,樹脂流速が一致する圧力を各樹脂について求め,異なる樹脂間において,温度依存項および樹脂流速が一致した同一毛管数での浸透性評価試験をおこない,浸透性と毛管数の関係を明らかにする取り組みをおこなうことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの取り組みを通じて,浸透性に対し,ミクロスケールの樹脂流動状態をあらわす毛管数が大きく影響していることが実験的に明らかになった.特に,異なる樹脂間で温度条件および圧力条件を調整し,毛管数をある値に一致させることができた場合,浸透性の値もまた同一値に収束することが明らかとなった.これは当初計画した目的にかなり近づいた結果となる.本取り組みでは,これを第一段階の成果として日本複合材料学会誌に投稿し,厳重な審査を経て掲載された. 一方で,毛管数を任意の値に変化させた場合,浸透性がどのように変化するか,また具体的に毛管数をどの程度変化させることが可能かについては,今後の取り組みにおいて明らかにしていく必要がある.これらの取り組みを経て,当初計画の目的である,浸透性と毛管数の相関性を明らかにすることができると考えられる.
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Causes of Carryover |
当初計画より毛管数を構成するパラメータの温度依存項および圧力依存項の評価が進展し,令和2年度に購入予定の消耗品を購入する必要が生じたため.特に,温度依存項を評価する際に,評価対象の樹脂を評価装置に導く過程の温度保持をおこなうための温度調節装置一式を新たに導入することにより,より安定した評価が可能となると考えた.前倒し請求額は新規導入する装置の概算額より決定したが,わずかに実購入額とずれが生じ,これが次年度使用額となった.
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Research Products
(6 results)