2020 Fiscal Year Research-status Report
多種多様な材質の担体に適用可能な糖鎖界面形成技術の開発とバイオ分離精製への応用
Project/Area Number |
19K05042
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
瀬戸 弘一 福岡大学, 工学部, 助教 (70621126)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 糖鎖高分子 / カテコール基 / コーティング / 分子認識界面 / バイオ分離精製 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖がもつ生体分子認識機能を利用したバイオセパレーションシステムを確立するため、簡便で多種多様な材質・形状の担体に適用可能な糖鎖界面形成技術を検討している。水中で親-疎水性両方の担体に接着できるという特徴をもつカテコール基に着目し、カテコール基(基板固定化部位)および糖鎖(生体分子認識部位)を側鎖にもつ合成高分子を設計した。予め長さを制御した主鎖高分子を重合しておき、その後糖鎖およびカテコール基を逐次的に導入することで糖鎖界面を形成するための高分子を作製している。 パラジウム触媒を用いて濃度の異なる糖鎖誘導体を主鎖高分子にクロスカップリングすることで、主鎖高分子への導入量を制御できた。糖鎖を導入した高分子に大過剰のカテコール誘導体をクロスカップリングすることで、高分子中の糖鎖およびカテコール基組成を変化させた。 得られたカテコールおよび糖鎖を含有する合成高分子の基板へのコーティング性能を単量体のコーティング性能と比較した。異なる材質をもつ基板(貴金属、金属酸化物、および合成高分子)に対するコーティング量を水晶発振子マイクロバランスにより測定した。用いたすべての基板に対して、高分子の方が単量体よりもコーティング量が大きかった。これは、高分子化することで1分子中に含まれるカテコール基の数が増え、担体との固定化力が増加したためである。同様に、カテコール基および糖鎖をもつポリフェノール配糖体のコーティング性能を水晶発振子マイクロバランスにより評価した。ポリフェノール配糖体を酵素重合することで基板と多点で相互作用するためコーティング性能が向上した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、①糖鎖界面を形成するためのカテコールおよび糖鎖含有高分子の合成、②カテコールおよび糖鎖含有高分子のコーティング性能評価、③形成した糖鎖界面のタンパク質結合性評価、および④糖鎖界面を形成した担体を用いたタンパク質の分離・精製の順で研究を進める。 ①の糖鎖界面を形成するためのカテコールおよび糖鎖含有高分子の合成に関しては、初年度の合成高分子に加えて、ポリフェノール配糖体を酵素重合したカテコールおよび糖鎖含有高分子を調製した。②のカテコールおよび糖鎖含有高分子のコーティング性能評価は令和2年度に実施し、分子間相互作用解析装置を用いることで、コーティング剤を高分子化する重要性を立証できた。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響で教員および学生の研究室への立入も制限されてしまい、当初予定していた③の形成した糖鎖界面のタンパク質結合性評価には着手できていない。令和3年度には、引き続き③形成した糖鎖界面のタンパク質結合性評価および④糖鎖界面を形成した担体を用いたタンパク質の分離・精製を実施する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、多種多様な材質・形状の担体を利用可能にするバイオ分離精製技術を開発することを最終目的としている。そこで令和2年度にコーティング性能の向上が立証されたカテコールおよび糖鎖含有高分子を用いて形成された糖鎖界面のタンパク質結合性を水晶発振子マイクロバランスにより評価する。異なる材質をもつセンサーチップ上に糖鎖高分子をコーティングし、様々な材質表面で特異的かつ強固なタンパク質結合性を示すのかを調べる。また、水晶発振子マイクロバランス装置をフロー型としてカスタマイズすることで、連続流通式バイオ分離精製の時の空間時間の影響および脱着条件の最適化が可能となる。 水晶発振子マイクロバランスを用いた解析で得られた知見を元に、連続流通式でのタンパク質の分離精製を実施する。タンパク質の分離精製に用いるクロマトシステムは、令和2年度に設置済みである。カテコールおよび糖鎖含有高分子を微粒子や多孔質膜といった担体にコーティングし、カラムに充填する。糖鎖密度、溶液供給時の空間速度、およびターゲットの脱着が最も重要な因子となるため、糖鎖をどれだけ導入するのか、溶液をどれだけ速く供給できるのか、そして糖鎖界面からどのように溶出させるのかを明らかにする。さらに、これまでは表面修飾が困難であったポリエチレンやポリテトラフルオロエチレンなどを担体にして、非特異吸着性や耐薬品性を併せもつ新規バイオ分離精製クロマトグラフィーの開発を目指す。
|
Research Products
(12 results)