2020 Fiscal Year Research-status Report
Novel utilization method of strengthening phases for improving steam oxidation behavior of heat-resistant steels
Project/Area Number |
19K05055
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
上田 光敏 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (90376939)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 耐熱鋼の高温水蒸気酸化 / 金属間化合物 / 析出強化相 / 異相界面 / 相互拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
耐熱鋼の耐水蒸気酸化特性を向上させるためには,Crなどの添加元素の拡散を促進させ,酸化の初期段階から耐熱鋼の表面に保護性酸化皮膜を形成させる必要がある。本研究では,母材に分散する析出強化相に着目し,耐熱鋼の高温水蒸気酸化挙動に及ぼす析出強化相の影響と母材の拡散現象に及ぼす異相界面の効果を実験的に明らかすることで,耐熱鋼の耐水蒸気酸化特性を飛躍的に向上させる析出強化相の析出形態やその組織制御法を提案することを目的としている。今年度は,添加元素としてWに着目し,耐熱鋼の水蒸気酸化挙動に及ぼす添加元素ならびに析出強化相の影響を実験的に明らかにした。耐熱鋼のモデル合金として,金属間化合物が析出するフェライト系およびオーステナイト系のFe基合金を選択した。種々のW濃度を有するFe-Cr-W合金(フェライト系)およびFe-Cr-Ni-W合金(オーステナイト系)を作製し,その予時効材を用いて650℃(フェライト系)および800℃(オーステナイト系)において高温水蒸気酸化実験を行った。酸化後の試験片について,合金の内部組織および表面に生成した酸化皮膜の構造や成長速度を詳細に解析した。その結果,Wの添加により両合金の耐水蒸気酸化特性が向上し,その効果は主に母材に固溶したWによってもたらされることが明らかになった。合金中のW濃度が母材の固溶限を越え,母相中に金属間化合物が析出すると,両合金の耐水蒸気酸化特性は更に良くなる傾向を示したが,その効果は固溶の効果よりも小さいものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐熱鋼の高温水蒸気酸化挙動に及ぼす添加元素の影響を,添加元素の固溶と金属間化合物としての析出による影響に分け,それぞれの影響を実験的に明らかにすることができた。また,各合金中のCrの拡散に及ぼす析出強化相の影響を実験的に検証する手法を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,各合金中のCrの拡散に及ぼす析出強化相の影響(異相界面の効果)を実験的に検証する。今年度に引き続き,対象とする合金系の予時効材を用い,合金中のCrのみが酸化する雰囲気下において高温酸化実験を行う。酸化後の試験片について,合金側のCrの濃度プロファイルを測定・解析し,表面へのCrの拡散量や合金中の見かけの相互拡散係数を算出する。また,Crの拡散量や見かけの相互拡散係数を析出強化相の体積分率の関数として整理し,母材の拡散現象に及ぼす異相界面の効果を定量的に評価する。他方,これまでに得られた研究成果をまとめ,耐水蒸気酸化特性を飛躍的に向上させる析出強化相の析出形態やその組織制御法を提案する。
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Causes of Carryover |
今年度は,すでに保有している実験装置等を用いて効率的に高温水蒸気酸化実験を実施することができたものの,コロナ禍にあって研究活動が一部停滞する時期があった。次年度は,合金中の相互拡散係数を測定する実験等を効率的に行うために,実験装置の作製や電気炉の増設を進める。
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