2020 Fiscal Year Research-status Report
All-solid-state-Z-scheme photocatalyst including Au@Cu2O core-shell structure
Project/Area Number |
19K05057
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
柳田 さやか 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 副主任研究員 (40579794)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光触媒 / 酸化チタン / 亜酸化銅 / 酸化タングステン / Z-スキーム |
Outline of Annual Research Achievements |
Cu2Oは光触媒として還元力が強い一方酸化力が弱く、単独では高い活性を示さない。申請者らはこれまでにルチル型TiO2にAuコア-Cu2Oシェル粒子を複合化した系で水中の有害なCr(VI)の還元および除去が非常に早く進行すること、この時の還元サイトがCu2Oであること、可視光でも反応が進行することを明らかにしてきた。令和2年度はこの材料の安定性・耐久性および反応機構について詳細な検討を行った。高負荷の条件で繰り返しCr(VI)の還元反応を行うと、光触媒は徐々に失活する。NaOH水溶液を用いて光触媒上に堆積したCr(OH)3を溶解することで、光触媒活性が回復することを明らかにし光触媒の再生が可能であることを示した。またXAFSにより複合体中の銅の価数を評価したところ、反応の進行とともにCu(I)はCu(II)に徐々に変化した。この時光学フィルタを用いて入射光中の紫外光を遮蔽すると、Cu(I)からCu(II)への変化は全光照射時に比べ促進された。これは紫外線照射時には光励起したTiO2からCu2Oへ電子が移動していることを示唆し、Z-スキームで反応が進行しているとする当初のモデルと矛盾しない。また、可視光光触媒であるWO3にAuコア-Cu2Oシェルを担持した材料を光電着法によって作製することを試みたが、WO3が溶解しないpH=12程度の条件での反応ではCu2OではなくCuOが析出した。作製したAuコア-CuOシェル粒子担持WO3光触媒について可視光下で2-プロパノールの酸化反応を行ったところ、2-プロパノールの分解速度がWO3単味の試料に比べ2倍程度向上する一方で分解中間体であるアセトンの分解は非常に遅くなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度はCu2O-Au-TiO2複合体の反応メカニズムを詳細に検討することができた。Cu2Oの酸化状態の分析はXRDやXPSでは判断が難しく難航していたが、今回XAFS測定が有効であると分かったことでCu酸化物を用いた他の系の調査についても今後より一層の進展が期待できる。一方で、複合体中のAu微粒子の役割については未だ不明な点が残る。①金の介在しないCu2O-TiO2系での反応メカニズムの解明とCu2O-Au-TiO2系との比較 ②金微粒子の持つ複数の効果、特に局在表面プラズモン共鳴に由来する効果と導電性に由来する効果が反応に及ぼす影響について調査する などが今後の課題となる。また、TiO2をルチルからアナターゼに変更し、ルチルと同様の活性向上の効果を生じるか検討を行ったところ、粒径の大きな(~200 nm)アナターゼ粒子に関してはAuコア-Cu2Oシェル粒子との複合化で活性の向上が見られたものの、粒径の小さな(<50 nm)、一般的に高活性とされているアナターゼ粒子に関してはCu2Oのシェルが安定に合成できず評価は困難であった。 可視光駆動を目指したCu2O-Au-WO3複合体についても試作を行った。まずは水熱法により100 nm程度の粒径のWO3を作製し、AuおよびCu2Oの担持を試みたが光電着法を用いた作製ではCuOが析出してしまった。CuO-Au-WO3複合体を用いた気相の2-プロパノール分解では、WO3単味よりも2-プロパノールの分解は早くなったものの分解中間体のアセトンがほぼ分解できなくなるという問題があった。今後は酸化が途中で止まる原因について考察すると共にCu2Oを担持する方法の再検討と作製した複合体の活性評価を行う。光触媒の作製に当初の予定よりも時間がかかったため可視光光触媒の活性評価が十分に行えていない点が、やや遅れているとした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
・Cu2O-Au-TiO2系について Cu2OとTiO2の間に介在するAu微粒子は2種の光触媒の間で電荷を受け渡す役割をしているが、局在表面プラズモン効果による反応促進の効果も活性の向上に大きく働いていることがこれまでの検討で明らかになった。令和3年度は光触媒反応におけるこれらの効果の寄与の大きさを見積もるため、入射光からAu微粒子の局在表面プラズモンの起こる波長を適切な光学フィルタを用いて遮蔽し、光触媒反応を行う。また、金を含まないCu2O-TiO2系との比較を行うことで金の役割についてより詳細に明らかにする。 ・WO3-Au-TiO2系について Cu2Oは塩基性の溶液中で生成するが、WO3は塩基性が強いと溶解する。これまでの検討でWO3が溶けない程度(pH=12)の溶液中でのWO3上へのCu2Oの光電着を試みたが、CuOが生成してしまいCu2OとWO3の複合化には失敗している。この対策としてフェーリング反応を利用した化学的な還元法で複合体の合成を再度試みる。電子顕微鏡での構造評価と還元および酸化反応における光触媒活性の調査を実施し、AuおよびCu2Oの担持によって可視光下におけるWO3の光触媒反応を促進できるか検討を行う。またWO3とCu2Oの組み合わせで活性の向上の起こらない場合には、Z-スキームが成立する別の物質の組み合わせを検討する。
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Causes of Carryover |
令和2年度は主に紫外光型光触媒の評価と可視光型光触媒の作製に注力していたため、計画時に予定していた可視光型光触媒の十分な評価ができなかった。そのため、評価で用いる予定であった各種の光学フィルタや試薬、可視光用の照度計などの購入について次年度に持ち越した。令和3年度は光触媒の評価に必要な種々の機器や試薬、また施設の使用料などに予算を充てる予定である。
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Research Products
(3 results)