2020 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism elucidation of long-term antibacterial property arrised in titanium based biomaterial
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19K05059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 幸裕 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (80607218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関野 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20226658)
後藤 知代 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60643682)
小正 聡 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70632066)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗菌 / 紫外光 / チタン / チタン合金 / 黄色ブドウ球菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
チタン(合金)表面にUV-C光を照射後、7日間もの長時間に渡って抗菌性が持続する事実が先行論文にて発表されており、この長期抗菌性の機構を解明することを目的に研究をスタートした。 前年度にJISに定められた抗菌材料評価に準じた形で長期抗菌性を評価できる状態にし、チタンとチタン合金試料に施す表面処理法として、2種類のVUV-UV光、すなわち、1つは185nmと254nmの光を照射し(照射器A)、もう1つは172nm光の照射(照射器S))を実施、生菌/死菌割合を評価し抗菌効率を比較した。その結果、両者はバラツキの範囲にあり明確な差は認められなかった。 ここまでの流れで曖昧であった点は、各抗菌実験におけるcontrol試料を何に据えるかであり、抗菌率はそれによって異なる。VUV-UV光照射処理をする前のチタン試料をcontrolとし、処理後の試料を評すると、確実に抗菌性が向上した。しかし、求めた抗菌率は大きくばらつき先行論文にあるような非常に高い抗菌性を毎回再現することは出来なかった。この原因は先に把握した超親水性により菌がチタン表面吸着するのだがその程度がばらつくことに由来した。 ここで「SA菌はチタン金属の表面に吸着することで生命維持活動が出来なくなって不活化され増殖能を失うのではないか」というヒントを得た。抗菌性発現はチタン表面に生じる超親水性を起源とするのならば、VUV-UV光照射で超親水性を生じない銅(Cu)ならば、照射の有無によらず変化しない。銅は元々、抗菌性を有するので都合が良く、SA菌を使った抗菌性評価実験を実施した。予想に反して、VUV-UV光照射で銅の抗菌性は大きく向上した。この原因はのちに探るが、VUV-UV光が金属表面に大きく影響する新たな例を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに実施場所の確保、設備を整えて長期抗菌性を評価できる状態にし、VUV-UV光照射を施したチタンのSA菌に対する抗菌性を調べてきた。VUV光照射時に生じるオゾンガスの影響で金属チタン表面には若干の酸化層が生じることを確認し、そのせいでVUV-UV光照射後の金属チタン表面は超親水性を呈し播種したSA菌は強く吸着する。この現象の繰り返し精度が悪く抗菌性の評価値はばらついたが、このことから、「SA菌はチタン金属の表面に強く吸着し増殖能を失う」という不活化ルートを思い描くに至った。すなわち、長期抗菌性の起源は、菌を束縛する超親水性であるというモデルである。 あと一年でこのことを直接証明すれば良い状態にあるが、他方、酸化チタンの表面で発生する反応性酸素種の存在を確かめておかねばならない。
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Strategy for Future Research Activity |
先行論文にある様な”光照射後の暗所長期抗菌性”を発現する効果は繰り返しては確認できていないが、VUV-UV光照射後の金属チタン表面は超親水性を呈し播種したSA菌は強く吸着して過半数は不活化することは把握した。あとは、照射後チタンに維持される抗菌性の本を確定する課題があるが、それに加えて、VUV-UV光照射された銅表面の抗菌性が大きく向上した訳も探っておきたい。 チタンに関しては、照射時に表面で発生する反応性酸素種(ROS)の存在を確かめておく。予想では、抗菌性を呈するほどのROS量は検出されることはなく、SA菌は死滅するモデルに落ち着くと思われる。この知見は、フラットな表面で起こる抗菌作用という点で興味深く発展性がある。銅については、VUV-UV光照射後の酸化度を調べると同時に、抗菌性評価時の溶液への(酸化)銅イオンの溶出の有無について調べ、定説の現象をVUV-UV光照射が助長した結果か否かを先ずは検討する。
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Causes of Carryover |
研究進行に伴って判明してきた抗菌機構モデルに照らしながら、それに続いて行うべき試行内容、実験事項を再設定している。その結果、当初予定したほど試料となるチタン板の購入をしなかったことと、コロナ禍の影響により変化した所内業務の状況も考慮した結果、分析依頼が実施出来なかった。これらの理由により次年度使用額が生じた。 20年度に生じたこの次年度使用額と助成金残額は、抗菌機構の確定に向けて各種の分析依頼と試料購入、そして実験消耗品の購入に充てる。
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