2020 Fiscal Year Research-status Report
残光性能を向上させるキャリアトラップを積極導入したLED照明対応型の長残光蛍光体
Project/Area Number |
19K05065
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
深田 晴己 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (90509176)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 長残光蛍光体 / フォトルミネッセンス / 熱ルミネッセンス / 光音響分光 / キャリアトラップ / 電子線励起 / 残光特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
① 電子線励起方式の音響波・熱ルミネッセンス測定システムの構築 前年度に引き続き,電子線励起方式の音響波・熱ルミネッセンス測定システム用の電子銃周辺の設計・製作を行った。具体的には,熱電子放出型の電子銃を用い,電子銃,加速電極および試料ホルダー(電子線照射対象物)の各配置を厳密に調整して,試料表面への安定な電子ビームの照射(加速電圧:~約10kV)の実現を目指した。電子線の照射量や安定性については,まだ少しだけ課題が残るものの,電子銃周辺の設計・製作は概ね完了した。また,蛍光体試料を取り付けるための液体窒素クライオスタットの設計についても概ね完了した。 ② トラップ中心に捕獲されたキャリアのエネルギー失活過程(発光・非発光過程)の解析 SrAl2O4:Eu,Dy長残光蛍光体のエネルギー失活過程を明確にするために,励起源をキセノン光源とした場合の光音響・フォトルミネッセンス同時測定,熱ルミネッセンス測定,および残光測定を行った。その結果,トラップ中心Dy3+の高濃度添加は,トラップの密度やトラップに捕獲された電子の熱失活過程に著しく影響を及ぼすこと,および,発光中心Eu2+の高濃度添加(濃度消光が起こらない範囲)は,非発光過程の出現に対する影響は小さいが,残光の高輝度化には寄与しないことを明らかにした。以上より,高輝度かつ長残光な蛍光体を得るには,非発光中心を形成しないトラップ中心をより多く母体内へ取り込ませることが極めて重要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子線励起方式の音響波・熱ルミネッセンス測定システムの構築が完了していない点である。電子銃周辺の設計・製作および試料を設置する液体窒素クライオスタットの設計は完了しているため,早急に液体窒素クライオスタットを製作し,電子線励起方式の音響波・熱ルミネッセンス測定システムを完成させる。遅くとも2021年9月よりこのシステムを使用した解析を行う。なお,SrAl2O4:Eu,Dy長残光蛍光体におけるトラップ中心に捕獲されたキャリアのエネルギー失活過程の解析については,おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
① 電子線励起方式の音響波・熱ルミネッセンス測定システムの構築 試料設置部分(液体窒素クライオスタット)の製作を早急に完了させ,遅くとも2021年9月よりこのシステムを使用した解析を行う。 ② トラップ中心に捕獲されたキャリアのエネルギー失活過程の解析と残光性能を向上させるキャリアトラップを積極導入したLED照明対応型の長残光蛍光体の探索 上記のシステムを使用して,約80Kにまで冷却された蛍光体に電子線を一定時間照射し,その後,試料の温度を一定の速度で約800Kまで上昇させたときの熱ルミネッセンス信号を測定する。試料温度の昇温速度や試料へ照射する電子線の加速電圧などを変化(~10kV)させた検討も行う。さらに,電子線を一定時間照射後,様々な波長(250~1000 nm)の断続光を照射した場合の光音響信号とフォトルミネッセンス信号を同時に測定する。また,励起源をキセノン光源とした場合の光音響・フォトルミネッセンス同時測定,熱ルミネッセンス測定,および残光測定も継続して行い,非発光過程に繋がるトラップ中心(欠陥や非発光中心など)と発光再結合に寄与するトラップ中心を特定する。さらに,発光再結合に至るトラップ中心のみを形成する不純物元素を選定し,その元素を積極導入したLED照明対応型の長残光蛍光体について検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)電子線励起方式の音響波・熱ルミネッセンス測定システム用の「ヒーター内蔵液体窒素クライオスタット」の製作に着手できなかったからである。 (使用計画)主に「ヒーター内蔵液体窒素クライオスタット」の製作費にあてる。
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