2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05066
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
松井 良介 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (00632192)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形状記憶合金 / TiNi合金 / 傾斜機能材料 / 耐食性 / 疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
高機能TiNi形状記憶合金の開発と応用を推進すべく,傾斜機能TiNi形状記憶合金および高耐食性TiNi形状記憶合金ワイヤについて,材料工学的・材料力学的観点から開発を行った.その結果,主に以下の成果を挙げた. (1)873K(600℃)で熱間圧延を加えた傾斜機能TiNi形状記憶合金について,その後室温でカバレージ1000%の超音波ショットピーニングを施すと,変形抵抗は加工硬化によって全体的に上昇し,同時に材料両端の差が大きくなる.即ち,室温における適切な条件での超音波ショットピーニングは強度アップと傾斜機能特性の向上に極めて有効である. (2)電解研磨を施し,超平滑表面とした市販のTiNi形状記憶合金線材(溶製材)に温度673K(400℃),保持時間0分の熱窒化処理を施すと,約150nmの不動態皮膜が生成される.これは先行研究の60分保持材(約200nm)と比較して薄い. (3)上記(2)の方法で作製したTiNi形状記憶合金は耐食性にやや劣るものの,表面観察の結果,均質に成膜されていることが示唆された.従い,この材料の腐食環境における回転曲げ疲労寿命は従来材に対して改善することが期待できる. (4)市販のTiNi形状記憶合金線材に超音波ショットピーニングを施し,その後機械研磨で表面の移着物を除去することによって耐食性および腐食疲労寿命が大幅に向上する.これは表面のアモルファス化および圧縮残留応力付与によるものと考えられるが,詳細は今後検討を加える必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
傾斜機能TiNi形状記憶合金の開発においては,熱間圧延後の超音波ショットピーニング処理が有効であることを明らかにすることができた.特に,超音波ショットピーニング処理によって材料両端の変形抵抗に大きな違いが現れることを示した点は,今後の研究方針の立案に有益な成果である.さらに,デジタル画像相関法による局所ひずみ分布計測を研究室独自の手法で構築することを新たなテーマに掲げ,実現に向けた検討を進めているところである.一方で,超音波ショットピーニング処理がどのように傾斜機能特性改善に寄与しているかを解明することや,力学的負荷・除荷サイクルを加えた場合の変形特性など,今後明らかにすべき点も幾つか残されている. 高耐食性TiNi形状記憶合金ワイヤの開発においては,不動態皮膜をより薄く成膜するための熱処理条件に目途がつき,また,超音波ショットピーニング処理の有効性も示すことができた.より薄い皮膜を成膜したサンプルは耐食性に劣る結果が得られたが,その反面,比較的大きな曲げ変形を受けても割れ難く,腐食疲労寿命が改善する効果が期待できる.今後はこの点に注目して主に腐食疲労寿命の評価を中心に行うことが必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
傾斜機能TiNi形状記憶合金の開発においては,超音波ショットピーニング処理がどのような原理で傾斜機能特性改善に寄与するかを明らかにする必要がある.この点を解明するため,ピーニング前後の金属組織,変態温度,残留応力の違い等を明確にすべきと考えている.また,実用上重要な力学的負荷・除荷サイクルを加えた変形特性も明らかにする必要がある.さらに,独自開発中のデジタル画像相関システムは完成を目指す. 高耐食性TiNi形状記憶合金ワイヤの開発においては,薄く成膜した不動態皮膜の腐食疲労寿命への効果を明らかにする.具体的には,10%NaCl水溶液中での回転曲げ疲労試験を行い,空気中での結果や従来材のそれと比較しながら効果を検証する.さらに,超音波ショットピーニング処理材の組織観察,表面分析,残留応力測定等によって同処理の耐食性や腐食疲労寿命への有効性を明らかにする.
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Causes of Carryover |
新規導入機器の仕様を見直し,費用の削減に努めたことによる.次年度は本未使用額を活用し,申請時の計画に対して消耗品費を増額する.この対応によって余裕を持った実験の遂行に努める.
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Research Products
(9 results)