2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel processing method for slicing of semiconductor wafer
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19K05081
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
甲藤 正人 宮崎大学, 産学・地域連携センター, 准教授 (80268466)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 短パルスレーザー / レーザープロセッシング / 変成 |
Outline of Annual Research Achievements |
近赤外短パルスレーザーにより半導体シリコンの表面を結晶質から非晶質へ変成を誘起する実験を行った。まず始めに、従前から非晶質化が報告されていた波長 800 nm のチタンサファイアレーザーを用い、1光子プロセスでの非晶質変成誘起について実験を行った。この結果、(100)面を表面に持つ単結晶シリコン基板においては、高い強度で照射した場合においても顕著な非晶質化は観測されなかった。(100)シリコン基板においては、同一箇所に複数回を照射することで、円形の非晶質層が観測され、次に中心部分の変成がない円環状の非晶質層が観察された。これは結晶から非晶質ならびに非晶質から再度の結晶化の過程を経た結果である。一方、(111)表面のシリコン単結晶基板においては、1ショットの照射においても、変成が誘起され、表面に非晶質層を観測することができた。しかし、(111)基板においては、再結晶化は見られず、明らかに(100)表面とは異なる結果となった。(111)表面に形成した非晶質層においては、円状の模様が観測され、これが非晶質層の厚さによるものか、または結晶配向度の異なりによるものなのか現時点では不明である。この面方位による変成層形成の違いについては、熱伝導率の異方性に起因する結果であると考えている。これらの結果は、レーザー加工における初期過程としても非常に興味深い。 また、長波長で発振しピコ秒ならびにナノ秒のパルス幅を持つファイバーレーザーを用いて、二光子吸収によるシリコン単結晶基板表面の非晶質化誘起について可能性を調べる実験を開始した。今後、基板表面を観測し、非晶質化に必要な照射条件等を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画においては、現有装置である波長 800 nm の超短パルスレーザーを基幹光源として用い、光パラメトリック発振 (OPO) 装置をレンタルすることで波長 1.5 μm のレーザー光を得る予定であった。しかし、2020年度初頭に、基幹装置である超短パルスレーザー装置の発振器励起用レーザーの出力が得られなくなり、修理あるいは交換が必須かつ急務となった。このため、OPO 装置のレンタルでの導入を断念した。必要経費と今後の耐用年数を考慮し、共有設備として新規の励起固体レーザーを購入し、交換した。このための分担金を供出する必要があるために、予算ならびに計画を変更した。これにより、1.5 μm 光の発生においては、安価な波長変換法による実現、本学または他の大学が有する複数の短パルスレーザーを用い、高NA対物レンズならびに高精度三次元走査ステージにおいても現有の光学部品で代用し実証実験を行うことが可能であり、計画通りの研究遂行には問題はない。ただし、2020年度末より新型コロナウイルス感染症感染拡大防止策による制限などにより、計画から若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進計画においては、波長 800 nm の超短パルスレーザ-を用いて、シリコン単結晶表面における結晶-非晶質間の相変化において、その基礎的な過程を明らかにすると共に、現有の装置に波長を半固定したパラメトリック光発生光学系を設計し、その導入を検討する。レーザー光吸収の理論的な計算結果を基に、他機関所有の波長 1.5 μm の短パルスレーザーを用い、近赤外レーザー光照射によるアモルファス化の可能性試験を継続、今後は実験結果を検討し、照射波長の変更が必要となった場合には、現有レーザー装置に導入する OPO 装置の波長を変更し、実験ならびに検証を行う計画である。最終的には、レーザーを二次元走査することで、単結晶シリコン基板内部の一定深さに変成層を平面状に作成し、これにより、Si 基板の一定深さに改質層を平面状に作成し、第 2 パルスを照射することで断裂/劈開を可能であるかを実験的に検証し、本研究で提案するスライス加工技術の原理実証を行う計画である。その際の表面粗さや分離表面の組成を分析し、本研究で提案するスライス加工技術の原理実証とする。
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Causes of Carryover |
2019年度末に計画していた学会研究会が中止となり、ならびに他機関で予定していた実験の一部が移動制限により実施ができない状況となった。このため、光学系の改善ならびに試料の種類の追加などを実施した。この結果、端数分として次年度使用額が生じた。2020年度においては、出張費ならび光学部品などの消耗品の購入に充てる。
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