2019 Fiscal Year Research-status Report
トレーサー粒子の追跡による超硬合金の熱間加工挙動の実験的解明
Project/Area Number |
19K05086
|
Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
高澤 幸治 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (20331952)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅見 廣樹 苫小牧工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (00547961)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 超硬合金 / 熱間塑性加工 / トレーサー粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
WC粉末(5.0-7.1μm),Co粉末(5μm),Al2O3粉末(1μm)をWC-10mass%Co,WC-9.9mass%Co-1mass%Al2O3となるように秤量して,湿式(エタノール)遊星ボールミリング(100rpm,5×12min)により混合し,得られたスラリーを熱風乾燥させ供試粉末とした. これらの粉末を内径10mmの黒鉛ダイ・パンチに充填して放電プラズマ焼結法で焼結した.チャンバー内圧10Pa未満,軸方向の加圧力20MPa,昇温速度1K/s,保持温度1423~1523K,保持時間3.6ksとして種々の温度で焼結し,焼結体組織における空隙の有無,WC粒の成長,Coの偏在・溶け出し,ならびに焼結体硬さから供試粉末の焼結温度を検討した結果,WC-10mass%Coは1473K,WC-9.9mass%Co-1mass%Al2O3は1488Kと決定した. この条件で焼結体を複数作成し直径10mm,高さ5mmに加工したものを供試材料として熱間塑性加工試験に供した.これらの供試材料の上下に直径20mmの黒鉛パンチを配し放電プラズマ焼結機で通電加熱しながら塑性加工を行った.チャンバー内圧10Pa未満,軸方向の加圧力50MPaとし,電流を30sごとに50Aずつ階段状に上昇させ昇温した.WC-10mass%Co,WC-9.9mass%Co-1mass%Al2O3は何れも1453~1463K程度で膨張(主に熱膨張)から収縮へと遷移し,3.0~3.5μm/sで圧下された. 熱間加工前および後の断面組織をSEM/EDSにて観察したところ,トレーサー粒子であるAl2O3粒子は超硬合金組織において原料粉末時の粒径1μmを維持しており,また100μm四方の視野においては均一に分散していることが確認できた.今後は,トレーサー粒子の分散方法や粒子間距離の評価について検討を進める.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を完遂させる上で最も困難と思われるのが,第一に,超硬合金組織(WC粒子,Coバインダー)とは異質のトレーサー粒子(Al2O3)を,原料粉末時の粒径・形状をある程度維持しながら供試材料の全体もしくは任意の領域に均一に分散させること,第二にそのトレーサー粒子の分散度合いから塑性変形量を推測すること,である. 現時点で供試材料全体にトレーサー粒子を均一分散させることが可能となっており,第一の条件はおおむね達成できると考えている.今年度の最低限の目標は,レーサー粒子を任意の領域に分散させることと,第二の条件を達成することである.それ以降は,Co量,WC粒径の異なる超硬合金も作成し,加工条件を変えて実験・評価を繰り返すことで研究目標を達成できると考える. 当初は,昨年度中にトレーサー粒子を任意の領域に分散させることまでを予定していたが,ボールミル容器および粉末の調達にやや時間を要したこと,また,焼結条件の決定過程で,黒鉛ダイ・パンチからの粉末の溶出を抑えるための条件出しに想定をはるかに超える実験数を要したこと,などの要因により,進捗がやや遅れている.今後はこの要因の影響は少ないため,効率的な実験計画のもと,遅れを取り戻しつつ研究を進める.
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点で,超硬合金素形材全体にトレーサー粒子を均一に分散さることができている.次に,トレーサー粒子が分散した層を,供試材料表層のみに形成させたり,トレーサー粒子の無い層と交互に積層させた供試材料を作製する方法について検討する.ここまでで供試材料の作製については完了となる. これと並行して,トレーサー粒子の粒子間距離を評価する手法について検討する.現時点では画像処理にてトレーサー粒子の位置を認識させ,その平均距離もしくは単位面積あたりの個数を指標とすることを想定している. その後は,塑性変形の度合いを反映しやすいトレーサー粒子の分散様式(全体,表層,積層)について検討したうえで,Co量,WC粒径,圧下荷重を主なパラメータとした熱間塑性加工実験を行う.
|