2022 Fiscal Year Annual Research Report
基板とターゲットの表面状態を独立に制御した高速スパッタ成膜技術
Project/Area Number |
19K05090
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
阿部 良夫 北見工業大学, 工学部, 教授 (20261399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 みどり 北見工業大学, 工学部, 教授 (70261401)
金 敬鎬 北見工業大学, 工学部, 教授 (70608471)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水蒸気スパッタ法 / 基板冷却 / 水酸化物 / Ni(OH)2 / エージング処理 / 熱処理 / 熱分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究により、基板温度を-80℃に冷却し、金属ニッケルターゲットをアルゴンと水蒸気の混合ガス雰囲気中で反応性スパッタした後、大気中、室温で1~2年のエージング処理することで、β-Ni(OH)2結晶が成長することを確認した。 そこで今年度は、Ni(OH)2薄膜を作製する際の基板温度の影響について熱力学的考察を行った。Ni(OH)2が、NiOとH2Oに熱分解する反応における生成自由エネルギー変化をもとに、平衡水蒸気圧力を計算した結果、スパッタ法で使われる1 Pa程度の真空中では熱分解温度が0℃以下となり、Ni(OH)2薄膜の作製には基板冷却が不可欠であることを明らかにした。次に、β-Ni(OH)2の結晶化について検討した。大気中、室温でのエージング処理時間の影響を調べた結果、成膜直後はアモルファスに近いα-Ni(OH)2であるが、1.5ヶ月のエージング処理によりβ-Ni(OH)2の結晶成長が進行することを見出した。また、大気中熱処理の実験を行った結果、100℃、1時間の熱処理により、わずかにβ-Ni(OH)2の結晶化が認められたが、150℃以上ではNiOに熱分解することがわかった。 本研究では、基板温度を室温以下に冷却し、反応ガスである水蒸気を基板、あるいはターゲット表面に直接噴射できる低温水蒸気スパッタ装置を作製し、成膜実験を行なった。その結果、従来のスパッタ法では作製が困難であったNi(OH)2薄膜の高速成膜に成功した。高速成膜についてはターゲットモードの検討、Ni(OH)2の生成については熱力学的な安定性をもとに考察を行なった。これらの知見は、水酸化物のように真空中で熱分解しやすい不安定な材料に対してスパッタ法を適用するための重要な成果であると考えている。
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