2019 Fiscal Year Research-status Report
電流電場支援を利用した直接通電焼結法による材料機能・構造デザインプロセスの開発
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19K05098
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井藤 幹夫 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00294033)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | パルス通電焼結 / 通電加熱 / 緻密化 / 局所加熱 / 省電力 |
Outline of Annual Research Achievements |
直接通電焼結において黒鉛ダイよりも電気抵抗率の大きいβ-FeSi2粉末を用いて直接通電焼結により焼結体を作製し、その緻密化挙動を黒鉛ダイを用いた焼結と比較し、パルス通電焼結法における直接通電の効果について調査した。 FeSi2組成の粉末を800℃で15時間の熱処理を行いβ相化処理を施した。次に遊星型ボールミルを用いて回転数300 rpmで10時間の湿式メカニカルミリングを施すことで焼結用試料粉末を作製した。この試料粉末を石英ダイを用いてSPS装置により加圧力50 MPa、昇温速度100℃/ minおよび25℃/ minで真空雰囲気にて焼結した。焼結中の圧粉体の緻密化挙動をパンチ棒の変位を記録することにより評価し、従来の黒鉛ダイを使用して作製した試料と結果を比較した。 石英ダイ使用時では昇温開始直後から収縮が開始し、高温になるにつれて収縮量の差は大きくなることが確認された。850℃で5分間保持したときの焼結体の相対密度は黒鉛ダイ使用時は70.7 %に対し、石英ダイ使用時では90.5 %と、黒鉛ダイ使用時と比較して緻密化が大きく進行していることがわかった。緻密化促進の要因であると考えられる局所的高温場を調査するために緻密化速度から直接通電焼結における粉末圧粉体の粒子接触部温度を推定した結果、試料測定温度より高温になっていることが確認された。粒子接触部温度は相対密度0.6以下では黒鉛ダイ使用時における同一密度を示す試料温度と一致した。一方、相対密度0.6以上では粒子接触部温度はその温度よりわずかに低くなり、圧粉体密度が小さいほどより局所的高温場の影響が大きいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
局所加熱効果について粒子接触部温度の推定に成功し,導電性粉末において緻密化が促進されるメカニズム解明に一定の成果を得た.本効果が今後様々な金属粉末を含めた材料系に適用可能である可能性が示唆され,印加電流・電圧と対象となる導電性粉末の電気抵抗率,さらにはその緻密化挙動との関係を明らかにできる見通しが得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
金属相などの電気抵抗が小さい物質では,粒子接触部でも電気抵抗が比較的小さく,また一般に熱伝導率も大きいため,従来手法での100℃/分程度の昇温速度では,粒子接触部における局所加熱効果が得られにくいという課題を克服する必要がある.そこでこれらの材料系に対し,従来法よりも印加電流値を大幅に増加させて急速昇温を行うことにより,粉末粒子内部と粒子間接触部の温度差,すなわち局所加熱効果を有効に引き出すことにより,β-FeSi2などで実証されている高効率焼結効果を得ることを目指す.直接通電焼結プロセスにおいて,数千A程度の大電流印加を行うことにより,黒鉛ダイを用いた従来法では実現困難な~100倍の昇温速度を可能にすることが期待できる。具体的には従来プロセスでは緻密化促進効果が得られない金属相などの良導電性粉末の焼結において、まずはCuやAgなどの純金属粉末を対象に、印加電流の増加、すなわち昇温速度の増加に伴う緻密化挙動の変化や焼結体の微細組織構造を特に粒界付近に着目して調査し、従来手法との差異について明らかにすることで、局所加熱効果に対する急速加熱の有効性について基礎的知見を得る。
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Causes of Carryover |
焼結に要する黒鉛ダイおよび石英ダイについて,研究室にあった在庫分から使用したため,今年度使用予定より少なくなった.また熱処理用の炉の作製において,業者の部品調達が遅れたため,年度末までの納品ができなかった.ダイなど消耗品は引き続き研究遂行において予算使用予定であり,炉の作製についてもコロナウイルスによる非常事態宣言などが収束すれば速やかに納品・予算使用の予定である.
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Research Products
(5 results)