2019 Fiscal Year Research-status Report
銅リサイクル促進にむけた電解精錬用銅合金アノードの溶解特性調査と組織制御
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19K05110
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐々木 秀顕 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 講師 (10581746)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電解製錬 / リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
不純物の含有量が高い銅アノードは電解精製を行う際に不動態化しやすいため,銅のリサイクル促進にむけて不動態化防止技術が求められている.本年度は,熱処理による組織制御が銅合金アノードの溶解特性を向上するか調査するため,結晶性を制御した銅合金の作製を行うとともに,溶解試験法の検証を進めた. 合金の作製においては,過去に調査を行った Cu-Ag および Cu-Sb 二元系合金から三元系合金へと調査の対象を拡大して,徐冷およびアニールした際に形成されるミクロ組織を調べた.組織観察の結果からはアニール時の温度に依存して成長する合金相の種類が変化することが確認され,この結果にもとづいて溶解特性を向上する熱処理温度の検討を行った.また,銅合金相の組成および結晶配向性によってアノード溶解時の挙動がどのように変化するか基礎的な知見を得るために,結晶性を制御した合金電極を作製する方法を探索した.特に,制御された結晶方位を有する銅単結晶基板の表面から別の金属を拡散させることにより,合金単結晶基板を作製する方法を探索した. 銅アノードの不動態化特性を定量的に評価するための溶解試験として,チャネルフローセルを用いたアノード溶解試験を試行した.本手法では,層流条件下での銅アノード溶解を行うため物質移動の制御が容易となり,電極近傍のイオン濃度が推定可能となる.本年度は,純銅アノードを一定の電流で溶解することで定常状態に近い溶解を観察し,不動態化が起こる電流の電解値が評価可能か検証を進めた. また,銅アノード不動態化に関する文献をまとめ,総説として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合金の組織形成の試験では,実験結果を既存の状態図と比較して新たな知見が得られており,全体として順調に進んでいる.合金単結晶基板の作製においては,種々の方法を試した結果として,研究目標を達するために必要となる試料作製の指針が得られた.溶解試験においては,試験方法の有効性を確認するための基礎試験から着手することとし,着実に成果を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
溶解試験の方法について検証したのち,熱処理を施した合金で溶解試験を行い,アノードのミクロ組織が溶解および不動態化におよぼす影響を明らかにして最適な熱処理条件を明らかにする.また,結晶方位や不純物濃度の異なる銅合金単結晶基板をアノードとして溶解し,結晶方位や不純物が溶解におよぼす影響について詳細な基礎的知見を得る.また,電解液の加熱や添加剤投入を行い,より操業プロセスに近い条件へ近づけて試験を行う.
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Causes of Carryover |
試料作製方法および試験方法を検証するための基礎試験を集中的に行ったため,新しい実験用物品を購入する段階に至らず,次年度使用額が生じた.次年度は基礎試験にもとづいて実験を発展させるため,おおむね予定通りの支出を計画している.
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Research Products
(1 results)