2019 Fiscal Year Research-status Report
非水溶液電析を用いる構造を制御した熱電変換薄膜の作製
Project/Area Number |
19K05111
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山本 宏明 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (40326301)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非水溶液電解 / 熱電変換材料 / 電析法 / 鉄-アルミニウム合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究を参考に、64.0 mol%AlCl3-26.0 mol%NaCl-10.0 mol%KCl を基本組成として採用し,鉄イオン源にFeCl2 を選択し、AlCl3とFeCl2のモル比を200:1とした63.80 mol%AlCl3-25.92 mol%NaCl-9.97 mol%KCl-0.32 mol% FeCl2四成分系溶融塩を調製し、熱電変換機能を有するFe-Al系合金の電解作製を試みた。この溶融塩中でカソード分極曲線を測定したところ、Feイオン種およびAlイオン種の還元挙動が観察された。この結果に基づき、Fe-Al合金の電析に最適な電位範囲を限定(0.5~-0.1 V vs. Al(III)/Al)し、定電位電解を行った。電析物の構造や組成分析を行ったところ、電解電位が卑になるにつれ電析物中のAl含有量は増加し、Alを0.2~32.0 mol%含有するFe-Al合金が得られることが分かった。さらに、0.5~0.1 Vで得られた電析物はFeにAlが固溶した固溶体であり、0.1 Vより卑な電位ではFe-Al系中間化合物であるFe3Alが析出することが明らかになった。電解電位により析出するFe-Al合金の組成および構造を制御できることが分かった。また、電解中のAlの部分電流密度を算出したところ、0.5~0.2 Vでは低いが、0.1 Vにかけて大きく増加した。これは、AlはFeとの固溶体を形成する,およびFe3Alを形成するためであれば、純Alの析出電位より貴な電位においても析出することを示唆する。なお、本研究で作製したFe-Al 合金膜に温度差を与えたところ、起電力が生じることが確認できたことから、熱電変換機能を有することが分かった。 Fe-Al系合金は組成によって熱電変換特性が変化する特徴を持つため、Fe-Al系熱電変換材料や、構造を制御したデバイスを電析により作製するためには必要な基礎研究であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,「溶融塩電解を用いたFe-Al系低次元熱電変換デバイスの新規作成プロセス」と題して先行実施した研究を推進するため、引き続き溶融塩電解を用いてFe-Al系熱電変換材料の電解作製について研究を行った。Fe-Al合金は組成により結晶構造が変化し熱電変換特性が変化することが知られている。そのため、電解時の電解条件を検討し、Fe-Al合金の組成および結晶構造を制御することを目的として研究を行った。 まず、AlCl3とFeCl2のモル比を200:1としたAlCl3-NaCl-KCl-FeCl2四成分系溶融塩において測定したカソード分極曲線の測定をすることで、溶融塩からのFeおよびAlの析出挙動を把握することができた。また、定電位電解における電解条件(電解電位)の範囲を絞り込むことができた。次に、電解電位を制御することで、Fe-Al合金の組成と構造を制御できることを明らかにすることができた。さらに、本研究で得られたFe-Al合金は熱電変換特性を有することが確認できた。 以上より,本年度に目的とした事項をおおむね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究では、AlCl3とFeCl2のモル比を200:1としたAlCl3-NaCl-KCl-FeCl2溶融塩における定電位電解において、電解電位を制御することでFe-Al合金の組成や析出状態を制御することで可能であることを明らかにした。Fe-Al合金は組成により熱電変換特性が変化することが知られている。そのため、Fe-Al合金の組成を制御することは非常に重要である。長時間あるいは多数回の電解を行うような場合、電解電位がわずかに異なると組成が大きく変化するような溶融塩組成では安定な電析(組成や結晶構造の維持)ができない可能性も考えられる。そのため、溶融塩組成や電解電位をより詳細に調べ、最適な条件を精査する必要があると考える。また、電解条件と得られるFe-Al合金の組成・結晶構造だけではなく、熱電変換特性との関係についても調べることを検討する。さらに、AlCl3-NaCl-KCl-FeCl2溶融塩におけるFe-Al系熱電変換材料の電析に関する研究と並行し、エチレングリコールなどの非水溶液を用いたZn-Sb系やBi-Te系熱電変換材料の電析についても研究を行い、その作製条件や熱電特製について調べる基礎研究を始めることを検討する。
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Causes of Carryover |
2020年の2~3月に実施予定であった学会が,新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のため中止になった.そのため,学会参加にあてる旅費などが次年度使用額として生じた.2019年度内に無理して使用せず,次年度必要になる試薬などの物品費に充てる.
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