2019 Fiscal Year Research-status Report
白金族錯体の溶解性制御技術の確立及びパラジウム選択沈殿剤開発への展開
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19K05116
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 智也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (80748624)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 白金族金属 / 沈殿分離 / 分子間相互作用 / 湿式製錬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Pd(II)のみを沈殿させるフルオロピリジンとPd(II)及び白金(IV)(Pt(IV))を沈殿させるヨードピリジンの性質に着目し、ハロゲノピリジンのPd(II)/Pt(IV)間における金属選択性の発現メカニズムを錯体化学的観点から明らかにし、金属錯体の溶解度制御に資する新規知見の取得を目的としている。2019年度は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を持つ2-ハロゲノピリジンのPd(II)、Pt(IV)に関する沈殿能を評価した。Pd(II)では、どのハロゲノピリジンでも、0.5-0.1 Mの塩酸濃度の範囲で、ほぼ100%の沈殿が確認され、塩酸濃度が5 M以上で沈殿率の減衰が確認された。Pt(IV)に関しては、ヨード > ブロモ > クロロ = フルオロの序列で、沈殿率が変化した。一方、ハロゲンを含まないピリジンでは、パラジウム及び白金ともに最大で、60%程度の沈殿率であった。これらの結果から。2-フルオロピリジンや2‐クロロピリジンを用いることで、Pd(II)を選択的に塩酸から沈殿可能である。 各白金族錯体の分子構造を明らかにするために、沈殿物のX線吸収微細構造や、沈殿物を再結晶し、単結晶X線構造解析を行った。その結果、ハロゲンの種類に関係なく、パラジウムでは、PdCl2L2(L:2-ハロゲノピリジン)を、白金では、[PtCl6](HL)2を形成することがわかった。この結果は、ハロゲンを持たないピリジンも同様である。 2-フルオロピリジンや2-クロロピリジンが選択にパラジウムを沈殿する現象を明らかにするために、各白金族錯体の特性と沈殿能の関係を研究している。2019年度は、密度汎関数法を用いて、結晶構造解析により決定した原子座標を用いて、白金族錯体の分子間相互作用の強さや疎水性を評価する方法論の確立を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2-ハロゲノピリジンのパラジウムや白金の沈殿率の評価や溶解度については、すでに確立された実験系であるため、順調にデータの取得を行うことができた。また、本研究で最もハードルが高いと考えられていた白金族錯体の分子間相互作用のエネルギーの評価方法についても、同時に、確立することできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度と同様に、パラジウム及び白金の沈殿率に関するデータの取得を進め、それらの金属の相互分離に有利な条件への最適化を進める。また2019年度に確立した密度汎関数法を用いた白金族錯体の物性評価についても進める。実験的な物性評価についても今年度より進めていく予定であり、取得が困難なパラメータがある場合は、計算化学的な評価法を取り入れ、進めていく。
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Causes of Carryover |
2019年度の3月に国内における学会に参加し、情報収集を行う予定であったが、キャンセルになり、その出張費用分の差額が生じた。今年度についても、すでに国際学会での発表が1件キャンセルになっている。2020年度は、国内出張が困難であり、当該費用が抑えられることから、実験を集中的に行う。それに伴い、消耗品費の割合が多くなる。また、2021年度に成果発表を多く行うことを考えている。
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Research Products
(2 results)