2020 Fiscal Year Research-status Report
非相溶性異粘度液液撹拌槽における分散過程・分散状態の複合可視化システムによる解明
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19K05118
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
上ノ山 周 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 名誉教授 (50233945)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 化学工学 / 流体・流動 / 撹拌 / 液液分散 / 分散過程 / 分散状態 / 分散時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
水と油のように互いに溶け合わない非相溶性の液-液系を対象とした撹拌操作は、例えば水中に油相のモノマーを懸濁させて、重合反応を起こし、高分子化合物を製造する懸濁重合反応槽や、液-液抽出における撹拌型分散・分離装置さらには、難水溶性薬剤を水中に均一に分散させる分散・混合装置等において決定的な役割を担っている。本研究では、研究代表者らがこれまでに、実験的・計測的可視化手法を駆使して、積み上げてきた分散現象の定量的データを基に、解析的・ 計算的手法を用いて分散過程ならびに分散状態の発現機構を論じ、その分散現象の解明を試みる。これにより液-液系撹拌操作の高度化・精緻 化の実現を目指す。これまでに研究代表者らが実験・計測的手法により蓄積してきた分散相・連続相に関するデータをさらに上積みした上で、これらの結果をCFD(数値流動解析)により再現することを検討する。解析・計算により装置・操作条件と分散・混合過程ならびに分散状態との関係を明らかにし、同分散現象の発現機構に迫る分散モデルを構築することを目的とする。 初年度は、非相溶性液―液系のレオロジー計測を可能なものとするよう既存のレオメータ機器の手直し、治具の追加を行うとともに、分散過程を数値流動解析する上での基本的な枠組みの確認を行った。また国内外における関連学会に参加出席し、情報の収集に努めた。 研究2年目の本年度は、非相溶性液―液系のレオロジー計測を行い、2定数パワーロウモデルで、これを定式化した。また本年度は、汎用数値流体解析ソフトr-flowを用いて、撹拌槽における液―液系分散過程のシミュレーションを、翼回転速度を3段階に切り替えて行った。数値解析の結果は、先行して行われた実測ベースの結果と良く整合するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、非相溶性液―液系のレオロジー計測を可能なものとするよう既存のレオメータ機器の手直し、治具の追加を行うとともに、分散過程を数値流動解析する上での基本的な枠組みの確認を行った。 また国内外における関連学会に参加出席し、情報の収集に努めた。 研究2年目となる本年度は、非相溶性液―液系のレオロジー計測を行い、2定数パワーロウモデルで、これを定式化することができた。2定数の1つ流動特性係数kは、油分率x =0で、水の粘度1×10^-3Pa・sとなり、またx =1でオレイン酸の粘度56×10^-3Pa・sとなる。水とオレイン酸との複合液の粘度は、油分率 x =0.65付近で、最大となった。この時、水滴が細かに分散し、恰も固体微粒子のように挙動しているものと推察される。一方、もう1つの定数である流動特性指数mは、油分率x =0あるいは1でm =1、即ちニュートン流体であることを示し、0 <x<1ではm<1即ち擬塑性を示した。なお分率x =0.3近傍で擬塑性は最も強いものとなったが、この領域で、kの油分率xに対する勾配は、最大となった。 また本年度は、汎用数値流体解析ソフトr-flowを用いて、撹拌槽における液―液系分散過程のシミュレーションを、翼回転速度を3段階に切り替えて行った。数値解析の結果は、先行して行われた実測ベースの結果と良く整合するものであった。 以上のことからおおむね順調に進行しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる次年度(令和3年度)は、これまでの実績を踏まえて、数値流動解析による分散過程・分散状態・分散時間のデータベース化を試みる。 翼回転速度は勿論のこと、翼形状(翼幅、翼高さ、翼設置高さ)、油分率を適宜に、変更して解析を行い、分散状態や、分散時間との相関を取ることから始め、同分散現象の発現機構に迫る分散モデルを構築することを目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、海外における研究成果発表の機会を失い、次年度に繰り越さざるを得ない状況となった。最終年度は、国内外の学会に対面で参加するための旅費として使用したい。また3Dプリンターを購入し、新規翼を樹脂で形成造形し、既往の翼における結果との比較を行いたい。可視化実験は、かなり困難なことから、トルクの経時的変化を計測し、分散達成に至るまでの時間を以って分散過程、分散状態の良否等を評価したい。
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