2020 Fiscal Year Research-status Report
熱力学的指標によるファウリング現象のモデル化と浄水膜設計への応用
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19K05120
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
南雲 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20552003)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 耐ファウリング性能 / 動径分布関数 / 分子動力学法 / ポリ(アクリル酸2-メトキシエチル) / ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル) |
Outline of Annual Research Achievements |
浄水膜の高性能化を指向する上で、膜の素材表面に耐ファウリング性能を付与するアプローチが欠かせない。そこで当該年度は、ポリ(アクリル酸2-メトキシエチル)を含む種々のアクリレート/メタクリレート系マテリアルを対象に、耐ファウリング性能の発現メカニズムを分子動力学(MD)法で解析することを試みた。具体的には、各種マテリアルと有機ファウラントのミクロ相互作用を動径分布関数(RDF)によって評価した。計算モデルの設定に際しては、マテリアルを構成する素材トリマーと、有機ファウラントのモデル物質としてのエチレングリコール(EG)分子を50wt%ずつ配置した2成分混合モデルを構築した。MD計算によって得られた計算データを解析し、マテリアル側鎖のケトン基とEG分子の構成ヒドロキシ基の間におけるRDFを算出した。その結果、アクリル酸ブチルやメタクリル酸2-メトキシエチルなどの繰り返し単位で構成される素材トリマーが、EG分子と相対的に強く相互作用することを確認した。これに続き、マテリアル側鎖の末端官能基とEG分子の構成ヒドロキシ基の間におけるRDFを算出した。その結果、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルやアクリル酸2-ヒドロキシエチルなど、側鎖末端にヒドロキシ基を有する素材トリマーが、EG分子と特に強く相互作用することが判明した。 以上の結果は、ポリアクリル酸ブチルやポリ(メタクリル酸2-メトキシエチル)、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)やポリ(アクリル酸2-ヒドロキシエチル)と比べ、ポリ(アクリル酸2-メトキシエチル)の耐ファウリング性能が顕著に高いことを示す既往の実験結果と符合する。この事実は、素材トリマー系を対象とする簡易的なMD計算が、耐ファウリング性能の発現メカニズムを解析する上での強力なアプローチとなり得ることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐ファウリング性能の発現メカニズムを簡便に解析する理論的アプローチが整備されつつあり、研究開始当初の進捗目標がおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
アクリレート/メタクリレート系を含む様々な素材を対象に、モデル系の分散・凝集状態や動径分布関数の解析を実践し、素材表面の親疎水性がファウリング特性に与える影響を考察する。これにより、耐ファウリング性能の発現メカニズムを詳細に解析する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、耐ファウリング性能の発現メカニズムを解析する作業に対して、当初計画をやや上回るエフォートを投入した。その結果、他の研究項目に関する特段の支出は発生せず、次年度使用額が生じた。2021年度は、大規模データを解析するためのワークステーションの購入を計画している。さらに、研究成果を公表するための学会の参加経費や、学術雑誌での研究成果の発表に際して必要な英文校正料や論文投稿料などを計上する。
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Research Products
(1 results)