2020 Fiscal Year Research-status Report
Surface control and functionalization of nanoparticles by plasma-gas-condensation process
Project/Area Number |
19K05139
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
日原 岳彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60324480)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 触媒 / Pt-Hf / Pt/TiO2 / ナノコンポジット磁石 / Fe-Co-Pt / リコイルループ |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置を用い、(1)燃料電池用電極触媒のPt-Hf合金とPt/TiO2コンポジット、及び(2)ナノコンポジット磁石を目的としたFe-Co-Ptナノ粒子混合堆積膜の研究を行った。以下に、それぞれの研究実績を述べる。 (1)プラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置を用いてPt-Hfナノ粒子を作製した。I-P特性評価から、触媒性能は60 at%Pt以上の組成でPt組成に比例し、Pt組成の増加にともない触媒性能が向上していること、STEM観察の結果から、粒子表面にHfが偏析し、単体で存在している様子が確認された。一方Pt/TiO2コンポジット触媒は、ヘリコンスパッタリング装置により作製した。Pt組成を0~75 at%と変化させたところ、最も触媒性能が高い試料は65at%Ptであり、膜厚120 nmの試料が最も高い最大電力密度を示した。触媒反応表面積と酸素の物質移動抵抗のバランスからから、触媒層の膜厚には最適値が存在する。また、熱処理によりPtが表面に偏析し、反応に関与するPtが増加することで最大電力密度が増加することが判明した。 (2)FePt-Fe系にCoを加えた三元系ナノコンポジット磁石(硬磁性相:L1o-FeCoPt合金、軟磁性相:FeCo合金)をプラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置で作製した。規則相形成のため試料を熱処理すると、Ptの拡散により硬磁性相の割合が支配的になってしまうという課題があった。そこで、ターゲット室を2つ使用することで、Ptの拡散を抑制して軟磁性相の存在割合を大きくし交換結合を強めることを試みた。リコイルループの測定結果、ターゲット室を1つ使用して作製した試料では、磁化の復元率は6%であったが、今回の試料の磁化の復元率は最大18%と大幅に向上した。各相の粒子を独立に成長させると、熱処理後に軟磁性相が残留することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、気相合成プロセスの、プラズマ・ガス凝縮法によるコアシェル粒子の形成過程の全容を明らかにし、ナノ粒子の気相合成技術で、意図するコアシェル粒子を形成できるようにプロセスをさらに深化させることを目的としている。本年度は、(1)燃料電池用電極触媒のPt-Hf合金とPt/TiO2コンポジット、及び、(2)ナノコンポジット磁石を目的としたFe-Co-Ptナノ粒子混合堆積膜の研究を行った。 (1)プラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置を用いてPt-Hfナノ粒子を作製したところ、I-P特性評価から、触媒性能は60 at%Pt以上の組成でPt組成に比例すること、また、STEM観察の結果から、粒子表面にHfが偏析し、コアシェル粒子が形成することが確認された。研究計画では、融点が高いHfがコア、Ptが表面層に偏析したシェル粒子になると考えたが、Hfの酸化により表面エネルギーが低下し、予想と逆の粒子構造を形成した。還元雰囲気で試料を作製するなど、酸化の抑制が必要であり、今後の課題としたい。 (2)軟/硬磁性複合ナノ粒子による交換結合型磁石の研究では、ターゲット室を2つ使用することで、Ptの拡散を抑制して軟磁性相の存在割合を大きくすることで、交換結合を強めることを試みた。リコイルループの測定結果、ターゲット室を1つ使用して作製した試料では、磁化の復元率は6%であったが、今回の試料の磁化の復元率は最大18%と大幅に向上した。各相の粒子を独立に成長させると、Ptの拡散が抑制され、熱処理後にも軟磁性相を残留させることに成功し、目的を達成できた。 以上の結果より、研究計画は順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた研究結果を踏まえ、次年度以降は以下のように研究を実施する計画である。 (1)Pt/TiO2ナノ粒子の作製と燃料電池の触媒性能評価では、TiO2に炭素あるいは窒素をドープした場合のコアシェル構造の変化を観察するとともに、燃料電池の出力特性を評価することで、触媒機能について考察する。Pt/TiO2ナノ粒子の場合、表面エネルギーが低いTiO2層が表面を覆う形状を取ることが予想されるが、さらに炭素や窒素をドープして表面エネルギーが変化した場合の構造と表面エネルギーの関係について考察し、コアシェル構造の制御を行うための知見を得たい。また、触媒機能として炭素や窒素ドープがTiO2の触媒機能を高めるという報告があり、燃料電池のアノードに適用した場合の出力特性向上に期待している。 (2)軟磁性と硬磁性の複合ナノ粒子から成る交換結合磁石のモデル物質の作製と磁気特性評価では、硬磁性相としてFe/Wナノコンポジットを試みる予定である。W(110)面上にエピタキシャル成長したFeが、5 MJ/m3のエネルギー積を有し、4T以上の巨大な保磁力を発現することが報告されている。プラズマ・ガス凝縮クラスター堆積装置を用いてFe/Wナノコンポジットを作製した場合、FeとWが固溶しない条件を調査しながら、Fe/Wナノ粒子を硬磁性相、Feを軟磁性相としたナノコンポジット磁石の作製を目指す。また、遊星型ボールミリングによりFeとWのコンポジットを作製し、構造と磁気特性を比較することで、Fe/W界面が磁性に与える影響を考察する計画である。以上の手順により、接合界面の状態と磁性層間の交換結合を明らかにし、交換結合磁石のモデル物質を作製する計画である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により、参加を予定していた学会がオンラインに移行し、旅費の支出がなくなったため次年度使用額が発生した。本年度も同じ状況が予想されること、また、研究が計画通り順調に実施できていることから、学会旅費に計上していた予算を用い、燃料電池触媒のCV測定を行うための試薬や消耗品費に当てることで、研究を発展させる予定である。これにより、電極反応の速度に関する情報を得ることができ、ナノコンポジット触媒の設計指針について考察を深めることが可能になる。
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