2019 Fiscal Year Research-status Report
Improvement on perovskite-type oxide catalyst prepared from a cyano complex precursor
Project/Area Number |
19K05151
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
八尋 秀典 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90200568)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ペロブスカイト型酸化物 / シアノ錯体 / ブラウンミラライト型酸化物 / PM酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
複合金属酸化物は単独金属酸化物とは異なる機能が発現するために,その有用性は高い.本研究で注目するペロブスカイト型酸化物(ABO3)は構成元素を幅広く選択でき,新しい触媒反応系へ展開できる魅力的な化合物である.申請者らはこれまで有機金属錯体結晶の持つ特徴をそのまま複合金属酸化物へ転写する,すなわち結晶から結晶への化学変換を行う調製法の研究を推進し,ペロブスカイト型酸化物触媒の新しい調製法と触媒作用を報告してきた.本研究では酸化物を修飾して活性向上を目指すのではなく,前駆体を修飾し,ペロブスカイト型酸化物触媒の性能を向上させるための調製法の確立を目指す.具体的には,①Aサイトへのアルカリ土類金属イオンを添加したペロブスカイト型酸化物触媒の調製法の確立,②金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法の確立,③その触媒特性(特にPM酸化)について調査する. 初年度は研究項目①に注力し,シアノ錯体熱分解法を用いたAサイト置換ペロブスカイト型酸化物触媒の調製について研究を遂行した.La1-xAxFeO3を得るためにLa3+とイオン半径の大きさが近いCa2+, Ce3+を用いて多核金属シアノ錯体前駆体La1-xAx[Fe(CN)6]を調製したところ,Laと置換金属A (Ca, Ce)の組成比に関わらず目的の前駆体を形成することがわかった.A = Caの場合,前駆体を1000 ℃, 1 h焼成したところ,0 ≦ x < 0.57では, La1-xCaxFeO3が生成し,0.72 < x ≦ 1 では,ブラウンミラライト型酸化物La2-2xCa2xFeO5が生成し, 0.57 ≦ x ≦ 0.72では,双方が混ざった混合相であることがわかった.一方,A = Ceの場合,700 ℃, 1 h焼成したところ,0 < x < 0.15で単一相のペロブスカイト型酸化物La1-xCexFeO3が得られた. 次年度は研究項目①を継続するとともに②の金属担持触媒の開発も並行して行う.また,①,②で調製した触媒を用い,③のPM触媒への応用を行う予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シアノ錯体熱分解法(CN法)を用いたペロブスカイト型酸化物のAサイトへのアルカリ土類金属イオンの添加方法の検討を行った。これまでにCN法を用いたLa0.9Sr0.1FeO3の調製に成功しているが,Aサイトへのアルカリ土類イオン(Sr2+)の添加量が少ないことが問題であった.そこで,Sr2+の代わりにLa3+とイオン半径の大きさが近いCa2+を用いて検討を行ったところ,多核金属シアノ錯体前駆体La1-xCax[Fe(CN)6]が0 ≦ x ≦ 1のすべての領域で合成できた.前駆体をマッフル炉中で1000 ℃, 1 h焼成したところ,0 ≦ x < 0.57では, La1-xCaxFeO3が生成し,0.72 < x ≦ 1 では,ブラウンミラライト型酸化物La2-2xCa2xFeO5が生成し, 0.57 ≦ x ≦ 0.72では,双方が混ざった混合相であることがわかった. さらに,CN法を用いたLa1-xCexFeO3の調製方法の検討を行った.Ce3+のイオン半径はLa3+と非常に近いため,Ca2+の場合と同様,シアノ錯体前駆体La1-xCex[Fe(CN)6]が0 ≦ x ≦ 1のすべての領域で合成できた.前駆体を1000 ℃, 1 h焼成したところ,Ceの含有量がどんなに少なくともCeO2の生成が確認され,単一相のペロブスカイト型酸化物は得られなかった.700 ℃で1 h焼成したところ,0 < x < 0.15でペロブスカイト型酸化物La1-xCexFeO3が単一相で観測され,XRDパターンは高角度側へシフトしていることがわかった.La0.9Ce0.1FeO3の組成比になるように,逆均一沈殿法(RHP法),クエン酸法で前駆体を調製し,1000 ℃, 1 h焼成したところ, RHP法ではCeO2とLaFeO3の混合相となり,クエン酸法のみCN法と同様にLa0.9Ce0.1FeO3の単一相のXRDパターンが得られた.
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では,下記の(1), (2)の触媒調製の項目を重点的に検討する.その後,得られた触媒を(3)の項目に示すようなPM酸化反応へ応用する. (1)Aサイトへのアルカリ土類金属イオン添加方法の検討:本研究では2価アルカリ土類金属イオンを含む金属シアノ錯体を調製して,低温合成により高表面積のAサイト置換ペロブスカイト酸化物を得る方法を確立する.具体的には以下の二項目について検討を行う.(a)原料,溶媒,条件(温度,pH,撹拌時間など)を系統的に変化させ,異種3核金属シアノ錯体前駆体合成に影響を及ぼす因子を明らかにする.(b) 前駆体を熱焼成してペロブスカイト型酸化物を得る.得られた酸化物の結晶性をXRDおよびTEMにより調べ,前駆体のどのような物性が結晶性に影響を与えるのかを明らかにする. (2)金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法の検討:ペロブスカイト型酸化物は通常表面積が低いので金属を高分散担持するのは困難である.申請者らは,金属シアノ錯体前駆体にAgイオンが表面吸着することを見出し,焼成後の試料でペロブスカイト型酸化物表面にAg粒子が高分散で存在することを予備的研究で明らかにしている.本研究では(a) Ag粒子高分散化の原因を究明するために基本的な物性データ(表面積(BET),粒子形態(FE-SEM),表面金属イオンの電子状態(XPS),結晶性(XRD)など)を焼成温度,焼成雰囲気を変えた触媒に対して取得する.また,残存する表面炭酸イオン種が高分散化の原因になっている可能性もあるため拡散反射IR,TPDを用いて表面状態を観察する. (b) Ag担持の状況が解明されたら,Pd,Pt,Ruへ展開して,(a)と同様な実験を行う.これらの測定を総合して,本法を利用したペロブスカイト型酸化物担持金属触媒の特徴を明らかにする. (3)調製した触媒のPM酸化触媒への応用:(1), (2)で調製した触媒を用いてPM燃焼試験を行う.
|
Causes of Carryover |
(理由)2019年度当初計画した主要な物品であるロータリーエバポレーターシステムが予定より安価に購入できたことおよび触媒調製のために購入を予定していた薬品や器具が効率的に利用でき消耗品費が抑えられたことにより、次年度以降に繰り越す結果となった. (使用計画) 令和2年度の研究費は、触媒調製のための薬品類や各種標準ガスや器具といった消耗品費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である.
|