2020 Fiscal Year Research-status Report
Improvement on perovskite-type oxide catalyst prepared from a cyano complex precursor
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19K05151
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
八尋 秀典 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (90200568)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペロブスカイト型酸化物 / シアノ錯体 / ブラウンミレライト型酸化物 / PM酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では①Aサイトへのアルカリ土類金属イオンを添加したペロブスカイト型酸化物触媒の調製法の確立,②金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法の確立,③そのPM酸化触媒特性について調査することを目的としている. 今年度も研究項目①を継続し,シアノ錯体熱分解法を用いたAサイト置換ペロブスカイト型酸化物触媒の調製について研究を遂行した.A(NH4)[Fe(CN)6]・nH2O (A = アルカリ土類金属イオン)前駆体を焼成したところ,A = Mgではスピネル型MgFe2O4, Caではブラウンミレライト型Ca2Fe2O5,Sr, Baではペロブスカイト型SrFeO3, BaFeO3の各金属酸化物が生成することがわかった. 研究項目②の金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法について以下の研究を遂行した.種々の金属イオンをLa[Fe(CN)6]・nH2O前駆体に含浸担持し,M/LaFeO3 (M= Co,Ni,Cu, Pd)触媒の調製を試みた.全ての触媒において, LaFeO3のXRDパターンのみがピークシフトすることなく観測されたことから, 本法で金属を担持する場合, 用いた金属がLaFeO3に固溶することなく, 担体表面に分散担持できることがわかった. さらに研究項目③のPM燃焼試験をSrFeO3, Ca2Fe2O5, LaFeO3触媒を用いて実施したところ, SrFeO3とLaFeO3はほとんど活性に違いは見られなかったが,ブラウンミレライト型Ca2Fe2O5は他の2つの触媒に比べて高いPM燃焼活性を示すことが明らかとなった. 次年度は研究項目①②を引き続き並行して実験を継続するとともに,①②で調製した触媒を用い,③のPM触媒への応用を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A(NH4)[Fe(CN)6]・nH2O (A = アルカリ土類金属イオン)前駆体を焼成した際にペロブスカイト型酸化物を含めた様々な金属酸化物の生成が認められた.例えば、A = Mgではスピネル型MgFe2O4,A = Caではブラウンミレライト型Ca2Fe2O5が生成した.今回初めてシアノ錯体前駆体の燃焼から他の構造を持つ複合酸化物が見いだされた.今後,前駆体と生成物との構造に関する因果関係を詳細に調べる必要が出てきた. 本年度はペロブスカイト型酸化物に担持する金属を絞り,金属がどのように担持されるかを調査する研究を実施し,当初の予定通りの研究を実施できた.第一遷移金属をLa[Fe(CN)6]・nH2O前駆体に含浸担持した後に焼成する新しい方法でM/LaFeO3 (M= Co,Ni,Cu)を調製した. (1) 全ての触媒でLaFeO3のみのXRDパターンが認められ,担持金属の由来のピークは観測されなかったこと,(2)各触媒のLaFeO3由来のXRDピークはシフトしなかったこと等を考えあわせ,第一遷移金属を担持する場合,第一遷移金属がLaFeO3格子内に固溶することなく担体表面に分散担持していると結論することができた. さらに,上記と同様な方法でPd担持触媒を調製したところ,Pdも第一遷移金属同様に担体上で分散していることが明らかとなった. アセチレンカーボンブラックを炭素源としたPM燃焼試験も予定通り実施できた.その結果,ペロブスカイト型酸化物触媒であるSrFeO3とLaFeO3はほとんど活性に違いは見られなかったが,ブラウンミレライト型Ca2Fe2O5は他の2つの触媒に比べて高いPM燃焼活性を示すことが明らかとなった.後者については来年度詳細に検討したい.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年の最終年度は,下記の(1), (2)の触媒調製の項目を引き続き検討するとともにまとめる.また,未測定試料および新たに得られた試料について,(3)の項目に示すようなPM酸化反応へ応用する. (1)Aサイトへのアルカリ土類金属イオン添加方法の検討(継続):2価アルカリ土類金属イオンを含む金属シアノ錯体前駆体を調製して,低温合成により高表面積の複合酸化物を得る方法を確立する.(a)前駆体の焼成温度と複合酸化物の構造との関係を系統的に調べる.(b) 得られた酸化物の結晶性をXRDおよびTEMにより調べ,前駆体のどのような物性が結晶性に影響を与えるのかを明らかにする. (2)金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法の検討(継続):第一遷移金属を含浸担持したLaFeO3ペロブスカイト型酸化物では金属が分散担持していることがXRD測定で予想できている.令和3年度では,金属高分散化の原因を究明するために基本的な物性データ(表面積(BET),粒子形態(FE-SEM),表面金属イオンの電子状態(XPS),結晶性(XRD)など)を焼成温度,焼成雰囲気を変えた触媒に対して取得する.また,残存する表面炭酸イオン種が高分散化の原因になっている可能性もあるため拡散反射IR,TPDを用いて表面状態を観察する. (3)調製した触媒のPM酸化触媒への応用(継続):(1), (2)で調製した触媒を用いてPM燃焼試験を行うとともに令和2年度実験でPM酸化に高活性であったブラウンミレライト型Ca2Fe2O5の触媒活性因子を究明する.
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Causes of Carryover |
(理由)令和2年度の新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初計画した出張が全てキャンセルとなったため,その分を物品費に加算し,キャラクタリゼーションに必要なガスクロマトグラフを購入した.触媒調製のために購入を予定していた薬品や器具が効率的に利用でき,消耗品費が抑えられたために,一部を次年度に繰り越す結果となった. (使用計画) 令和3年度の研究費は,触媒調製のための薬品類や各種標準ガスや器具といった消耗品費および愛媛大学の共通機器の使用料などに使用する予定である.
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