2019 Fiscal Year Research-status Report
カチオン性サイトを持つ金ナノ粒子触媒の構築と有用化合物変換反応への展開
Project/Area Number |
19K05152
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
石田 玉青 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (90444942)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金ナノ粒子 / ハイドロキシアパタイト / SMSI / アルケンの異性化 / ソフトルイス酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
金ナノ粒子とハイドロキシアパタイト(HAP)との間に生じる強い金属-担体相互作用(Strong Metal-Support Interaction, SMSI)は、酸化的雰囲気下での熱処理によって発現し、HAPの薄い層が金ナノ粒子表面を一部被覆すると同時に金表面のカチオン性を増大させる。SMSIによって金のソフトルイス酸性が向上することを期待して、ビニル基交換反応ならびにアルケンの異性化反応を行った。 酸化的および還元的雰囲気で熱処理することによって、それぞれSMSIを有するAu/HAP_O2とSMSIでないAu/HAP_H2を調製した。金の粒子径は透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果、どちらも2 nm程度であったが、ビニル基交換反応とアルケンの異性化反応における触媒活性を比較したところ、どちらの反応においてもAu/HAP_O2はAu/HAP_H2よりも高い触媒活性を示すことを見出した。CO分子をプローブとする拡散反射型赤外分光(DRIFT)測定より、Au/HAP_O2はAu/HAP_H2よりも金のカチオン性が増大していることを確認した。 また、HAP中のCaを別の金属イオンに置換した置換HAPを担体として検討した結果、Au/置換HAPにおいても酸化的雰囲気下での熱処理によってSMSIが発現し、Au/置換HAP_O2は、Au/HAP_O2よりも触媒活性が向上することが分かった。 CO-DRIFT測定の結果、Au/置換HAP_O2は、Au/HAP_O2よりも更に金の電子状態がカチオン性を帯びていることを確認した。 これらの結果より、SMSIの発現、ならびに担体HAPの構成金属イオンの最適化により金ナノ粒子の電子状態を制御でき、アルケンの異性化反応に対する触媒活性を向上させることが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SMSIを有するAu/HAP_O2では、HAPによって一部金ナノ粒子表面が被覆されるため活性サイト数は減少するものの、金の電子状態制御によりSMSIを有するAu/HAPの方が高い触媒活性を発現させることができ、当初の目的を達成することが出来た。SMSIの度合は熱処理温度によって変化するが、触媒活性との相関から熱処理条件も最適化できたことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
種々のAu/HAPにおけるSMSIの有無やその度合はTEM観察により評価しているが、TEM観察ではどの程度金ナノ粒子がHAPで被覆されているか、定量的な評価が難しい。今後は、金表面への分子吸着を利用した、露出表面金原子数を定量的に評価する手法を検討する。 また、HAPと酸化物との複合材料や、HAP以外の担体を基盤として、SMSIを利用してカチオン性を増大させた金触媒の開発を進める。
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Causes of Carryover |
触媒構造解析のために外部機関で測定を予定していたが、他の研究課題での測定試料が多く、別の予算で出張旅費・機関利用料を支払った。また、2月に予定していた中国出張、3月に参加を予定していた学会が新型コロナウイルスの影響により中止になったため旅費・参加登録費を使用しなかった。これらにより、旅費・その他経費が予定額よりも少なくなった。
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