2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K05153
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
亀川 孝 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50525136)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シリサイド / 化学処理 / 花弁状構造 / ナノ構造触媒 / 環境浄化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、汎用元素からなる金属シリサイドの化学処理によるナノ構造制御法の開発と、触媒・触媒担体・吸着材料としての応用を進めている。微細化やナノスケールで形態を制御することで、特異な物性発現や飛躍的な特性の向上を期待できる。本年度は、カルシウムシリサイド(CaSi2)を中心に化学処理や金属イオンを含む溶液での処理条件について詳細に検討した。具体的には以下の項目を中心に研究を行った。(1) 化学処理をHCl、NaOH、KOH、NH3などの各種水溶液中で行い、種類と濃度が形態変化に及ぼす影響について検討した。CaSi2は平滑な表面構造を有する塊状の粒子である。塩酸で処理するとCaSi2の構造は壊れ、Siシートが生成する。NH3水中で処理しても粒子の形態に大きな変化は見られないが、NaOHやKOH水溶液を用い同じ時間処理した場合には高比表面積な花弁状構造へと変化することがわかった。XRDパターンに大きな変化は見られず、CaSi2の構造を保持しつつ表面積が増大することを確認した。(2) 貴金属の前駆体塩の水溶液中にCaSi2を加えて撹拌すると、金属AuやAgが速やかに表面に生成していることがわかった。また、Pdイオンの場合は、金属Pdではなく酸化物(PdO)表面に生成することを見いだした。脱水した有機溶媒中では変化が起こらず、金属や酸化物の生成には水が関与することが示唆された。また、水溶液の濃度を調整すると、CaSi2への同じ担持量においても金属AuやAgの大きさをナノサイズで制御できることを見いだした。(3) PdOなどCaSi2表面に生成した酸化物の還元挙動が、SiO2などの他の酸化物の担体上とは異なることを見いだした。また、高比表面積なCaSi2では微細な金属や酸化物が生成するので、水素化反応やレドックス反応において高い触媒活性を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請課題を推進する中で、化学処理により得た高比表面積構造を活かすことで、触媒や触媒担体として金属シリサイドの利用が図れることがわかり始めている。CaSi2の性質を利用すると化学還元剤や加熱処理なしに金属や酸化物を担持でき、これらは高い触媒活性を示す。また、酸化物の還元挙動が一般的な触媒担体上とは異なる事もわかり始めており、金属シリサイドの特徴を活かした触媒設計のための知見が蓄積できている。当初の目標に向けて概ね順調に、研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究より得られた知見をもとに、高比表面積構造を活かすことで金属シリサイドの触媒・触媒担体としての応用研究を継続して進める。各種分光学的手法を用いた解析を行うと共に、環境浄化をターゲットとする触媒反応系にて機能・特性評価を進める。化学還元剤や加熱処理なしに金属や酸化物を担持できる特徴を活かし、一般的な酸化物の触媒担体と比較して金属シリサイドならではの触媒担体としての機能を示せるように努める。
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Research Products
(2 results)