2021 Fiscal Year Research-status Report
金属イオン交換性多孔質窒化炭素の創製とその特性の解明
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19K05157
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
尾中 篤 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (10144122)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 層状窒化炭素 / 熱濃硫酸 / 熱希硫酸 / 2-ナフトアルデヒド / メタノール / ジメチルアセタール化 / 固体酸触媒作用 / 硫黄分元素分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,層状窒化炭素を室温下濃硫酸中に懸濁させることで,層状窒化炭素を構成するメレムポリマー鎖間の水素結合が切断され,それに伴って層が剥離する現象を発見した.引き続きNaOHおよびEtOH の3 段階処理を施した窒化炭素は180 m2/g の比表面積をもつことがわかり,この多孔質窒化炭素をnano-C3N4 と名付けた. そこで本研究では,新しく層状窒化炭素を熱濃硫酸処理後水洗して得られた試料を,EtOH 中に漬けた試料[Y],及び層状窒化炭素を90 %硫酸,50 %硫酸に漬けた後水洗し,さらにEtOH に漬けた試料[Y90],[Y50]が示す固体酸性や固体酸触媒作用について調べた. まず,これらの材料を酸触媒として用いて2-ナフトアルデヒドのジメチルアセタール化をメタノール媒体中で行い,それぞれの固体酸触媒活性の評価を行った.試料[Y]を用い,60℃で72時間反応させたところ,52%の収率で目的生成物が得られた.同様に[Y90]および[Y50]を用いて行ったところ,20%,0%の収率であった.対照実験として,有機酸のTsOHを用いると,その収率は16%であった. 次に,試料[Y]の元素分析の結果,[Y]は1g当たり0.42%の硫黄原子を含むだけであった.また[Y]の非表面積は,102 m2/g,細孔容積は0.30 cm3/gであった. 更に[Y]のIR分析の結果,硫酸イオンによる吸収強度は非常に弱かった. 以上の結果から,試料[Y]を調製する過程で,水洗を繰り返すうちに担持した硫酸はほぼ溶出し,その結果良好な固体酸触媒作用を示さなかったと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
窒化炭素を構成するポリヘプタンジン骨格鎖が多くの窒素原子をもつことから,硫酸固定用の優れた基盤材になると期待して,層状窒化炭素を熱濃硫酸処理し,その後水洗する実験を行った. しかし,得られた試料は硫酸を強固に固定できず,水洗によって添加した硫酸は全て溶出していること,骨格に多数存在する窒素原子は,塩基性を殆ど示さないことが明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ窒化炭素(nano-C3N4) は層状窒化炭素(g-C3N4)に比べて,その比表面積が20倍以上大きい特徴をもつことがこれまでの研究によりわかっている.この特徴を活かし,ナノ窒化炭素に含まれるアルカリ金属イオンに基づく固体塩基触媒作用(ニトロアルドール反応,クネベナーゲル反応等)や,金属イオン交換能を活かすことで種々の貴金属イオンを骨格内へ導入し,窒化炭素骨格に強固に多点配位した貴金属イオンが示す新たな金属イオン触媒作用(C-H活性化反応,各種カップリング反応)の研究を進める予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナの蔓延状況による行動制限から,共同研究者の学生への入構制約もあり,研究が当初目標通りには進めることができなかった. 次年度においては,新たな研究指針に従って,研究を進める予定である.
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