2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of technology to dramatically increase the expression of foreign genes introduced by viral vector
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19K05165
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
荒尾 雄二郎 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40151146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 外来遺伝子 / 遺伝子発現増大 / 哺乳動物細胞 / ウイルスベクター / 糖 / オスモライト / 強化型緑色蛍光蛋白質 / 高浸透圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物細胞での外来遺伝子発現は必要不可欠な基盤的科学技術である。本研究では、糖などが発揮する細胞状態の適正化作用を利用して、極めて高いとされるウイルスベクターによる外来遺伝子発現を、さらに高くする技術を開発する。 2020年度は、昨年度に実施したアデノウイルスベクターを利用した外来遺伝子発現において十分な効果の認められた添加物について、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた外来遺伝子発現でも増大効果が発揮されることを、蛍光強度を指標として、確認した。 具体的には、HepG2細胞を対象とした場合、D-glucoseで45倍、L-rhamnoseで35倍の増大が観察された。H28細胞では、Taurineで41倍、D-arabinoseで22倍の蛍光強度増大が得られた。A549細胞ではD-glucoseで17倍、FL細胞ではMyo-inositolで12倍の蛍光強度増大が検出された。HepG2、H28、A549、及びFL細胞と他の添加物を組み合わせた場合、並びにNCTC2544細胞を対象とした場合、6倍未満の蛍光強度増大しか得られなかった。また、A431、H2452、MES-SA、及びPC-3細胞を対象とした場合は、3倍程度の弱い蛍光強度増大しか実現できなかった。 レンチウイルスベクターを利用して外来遺伝子発現を行った場合でも、MOIが低すぎたにも関わらず、A431細胞とPullulan、A549やHepG2細胞とD-galactoseやD-glucoseの組み合わせで、数倍の蛍光強度増大を実現できた。 これらの結果は、遺伝子導入用のウイルスベクターを変えても外来遺伝子発現は添加物により増大させることができることを意味する。ただし、如何なる細胞にも大きな効果を示す添加物を見出すことはできなかった。従って、細胞ごとに最も効果的な添加物を選定する必要があると結論づけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、アデノ随伴ウイルスを用いた外来遺伝子発現に対する糖などの増大効果を評価できた。すなわち,当初予定したA549細胞を対象にして、アデノウイルスで遺伝子導入した場合に、比較的大きな効果の認められた5種類の糖について評価したのみならず、A431、HepG2、FL、NCTC2544、H2452、MESーSA、PC-3の各細胞において効果を評価することができたことは予定以上の進展であった。その結果、HepG2細胞でのD-glucoseやL-rhamnose、H28細胞でのD-arabinoseやTaurineなど、非常に大きな効果を有する化合物を見出し得たことは大きな成果である。また、糖類のみでなく、オスモライトの1つであるTaurineが大きな効果を発揮することもあることを確かめられことは期待以上であった。 他方、細胞の種類によっては、外来遺伝子発現そのものを許容しない場合があった。このよう場合、添加物の種類や濃度を変えても外来遺伝子発現を増大させることはできず、別の根本的要因のせいであると考えられる。その原因を突き止め、それに対する対応策を創出する必要がある。すでに手掛かりは得ており、対応策の準備を進めている。 レンチウイルスで遺伝子導入した場合でも、添加物により外来遺伝子発現が増大することは確かめられたが、その効果は大きくはなかった。MOIが低すぎたせいであると考えられ、再度、MOIを増やして評価する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,アデノ随伴ウイルスベクター、及びレンチウイルスベクターを利用して、蛍光蛋白質遺伝子を、ヒト細胞をはじめとする哺乳類細胞に導入し,糖などの添加物がその発現を増大する効果を実証した。2021年度は,予定通り,ポリエチレンイミンなどのカチオンポリマーを用いて、組換えウイルスではないアデノウイルスとプラスミドDNAの複合体を作り、組換えウイルス使用時と同様に高い効率で外来遺伝子を哺乳動物細胞に導入する。そして、この方法を用いた場合でも糖などの添加物で外来遺伝子発現増大を実現できることを確認する。細胞はA549の使用を予定しているが、他のヒト細胞についても検討する予定である。ウイルスは、野生型ADV5型を用いる。プラスミドDNAは、CMVプロモーターで制御されたEGFP遺伝子を有するpEGFP-CMVを使用する予定である。なお、野生型アデノウイルスを不活化する必要があり、その際には、8-methoxy psoralenと超波長紫外線を用いる方法とmethylene blueと可視光線を用いる方法のどちらが適しているかを確認する。また、ポリエチレンイミンとそれ以外のカチオンポリマーの比較を行う予定であり、それらの準備を進めている。
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Research Products
(1 results)