2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of fuctional molecular recognition elements utilizing a highly stable cushioning scaffold protein
Project/Area Number |
19K05166
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今中 洋行 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10379711)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 分子認識素子 / 相互作用 / タンパク質 / 足場 / ペプチド / 生体分子 / 分子デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
多価化機能性分子認識素子の開発に向け,構造が極めて安定な超好熱菌由来三量体タンパク質CutA1をリガンドバイオ分子(ペプチドあるいはタンパク質)提示のための足場として利用し,バイオ分子間相互作用の制御・検出の高度化を志向して研究を行った.令和元年度はCutA1へのバイオ分子挿入サイトの探索を重点的に進めた.CutA1の結晶構造データを基に,サブユニット内あるいはサブユニット間相互作用への寄与が低く,二次構造形成領域に含まれないと推定される残基を複数リストアップし,それぞれの部位に異なる長さのペプチドを挿入した.大腸菌を宿主とした発現系における可溶化や発現蛋白質の熱安定性について調査した結果,耐熱性を維持しつつ十分量の可溶化発現が可能な挿入サイトを複数見出した.さらに,複数のサイトへのペプチド挿入についてそれぞれの長さを変化させた様々な組み合わせの素子をデザインした.これらのタンパク質群の発現特性評価の結果,折り畳みの際の立体構造形成への負荷が大きく,顕著な構造安定性の低下がみられたものもあったが,十分な可溶化率および耐熱性を兼ね備えた多価化分子認識素子の取得が可能であることを明らかにした.また,Enzyme-Linked Assayによる相互作用検出において,リガンドの提示部位が感度に大きな影響を及ぼすことを示した.一方で,CutA1のペプチド挿入サイトへのVHH抗体のCDR3配列移植が標的分子との相互作用に及ぼす影響について調査した.その結果,配列の移植によって相互作用はほとんど検出されなかった.したがって,標的分子認識の鍵となるペプチド配列(CDR3)は,単独での相互作用力の強さに加えて足場分子との相互作用による配位制御が重要であることが強く示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超好熱菌由来CutA1分子内へのアミノ酸配列挿入が可能なサイト数の拡張,すなわち多価化CutA1創出にむけた分子基盤の確立に関しては,三次・四次構造への影響が低いことが予測される部位を中心にリガンド分子挿入候補を複数設定し,それぞれにStrepTagIIやGly, Serより構成されるスペーサー配列を挿入後,発現の安定性・可溶性を指標に一次的な評価を行った.その結果,複数の新規なリガンド挿入可能サイトを同定できた.挿入サイトの配置や多価化の可能性についてもELA (Enzyme Linked Assay)を軸に評価した.これら当初予定していた研究について特に遅れはない.また,CutA1へのVHH抗体のCDR3移植が標的分子との相互作用に及ぼす影響に関する知見も得られた.以上,CutA1を足場とした分子認識素子の開発について研究は順調に進捗している
|
Strategy for Future Research Activity |
生体分子間相互作用の高感度検出・精密制御を可能とする分子認識素子の創出に向け,CutA1の機能開発のさらなる進展を図る.CutA1が三量体で,N,C両末端がいずれも同一面上に位置することを鑑み,遺伝子工学的手法を用いて末端同士を適当なスペーサー配列を介してタンデムに連結することで,一本鎖型CutA1の創出を試みる.リガンド分子コーディング配列を適宜挿入し,発現タンパク質のサブユニット同士が良好に折りたたまれ,可溶化すれば,一分子中に三種類の異なる分子認識素子を提示することが可能となり,これによっても多価化が図れると考えている.リガンドペプチドStrepTagIIの挿入数・挿入部位を変更し,リガンド密度や配向が相互作用検出感度に及ぼす影響を評価する.さらに,CutA1サブユニット配列の連結数を変更した複合分子についても各種デザインし,発現特性,発現タンパク質の量体構造や標的分子との相互作用検出特性などについて詳細に評価する. 加えて,CutA1を足場とした分子認識素子の多価化レベルの自在な制御を目的として,コネクタータンパク質の利用可能性について検討を加える.同程度のサイズのタンパク質であり,共に単量体であるBarnase-Barstar間相互作用をモデルとして,一本鎖型CutA1への挿入可能性について調査する.他方,進化分子工学手法を用いた標的特異的分子認識素子の取得のため,ランダム配列が複数挿入された一本鎖型CutA1をT7ファージ上に提示するためのライブラリー断片の調製法の確立も進める.このような詳細な機能評価・技術開発を通じ,分子認識素子の配向制御,機能維持ならびに多価化を同時に担保しうる分子設計・調製技術の基盤を確立する.
|
Research Products
(4 results)