2019 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブと好熱菌酵素からなるナノバイオ融合デバイスの開発
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19K05172
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
六車 仁志 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20309719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平塚 淳典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (70392652)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バイオデバイス / 単層カーボンナノチューブ / 酵素 / アノード / カソード |
Outline of Annual Research Achievements |
カーボンナノチューブと好熱菌酵素からなるナノバイオ融合デバイスの開発を行う。研究遂行には、応募者が開発した技術、(1)長寿命、高出力、高温動作が見込める好熱性菌由来の酵素技術、(2)酵素から電極へのエネルギーの取り込みとして、完全孤立した単層カーボンナノチューブによる直接電子移動機構、(3)実用化・産業応用のための簡便で量産性の高い作製方法開発のためのナノバイオ界面技術、を集約発展させる。第一年度の研究計画は、生物燃料電池用カソード酵素の開発である。アノードには、すでに開発している好熱菌由来のグルコース脱水素を用いた。電流密度、開放電圧を評価項目として試した。バイオカソードにはラッカーゼを、最大電流密度0.01mA/cm2、開放電圧0.6Vを得た。カソードに多孔質体を使用すると電流値がやや増加した。第二年度の研究計画の一部を前倒して行った。単層カーボンナノチューブの高性能化を取り組んだ。すでに、実績のあるアノード電極用の酵素である、グルコース脱水素酵素と孤立した単層カーボンナノチューブ間の直接電子伝達を形成した。その際、単層カーボンのチューブの直径依存性を調べた。改良直噴熱分解合成法は、直径だけを変え、長さ等の他のパラメーターを変えないので、この研究目的に適する。直径1.5nm以下の単層カーボンナノチューブを用いたアノード電極が1.5nm以上に比べて高い電流値を示すことがわかった。これは、酵素の表面の1.5nm溝の奥深くに活性中心があり、その溝幅以下の直径の単層カーボンナノチューブが近づけるという仮説に沿っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第一年度では、生物燃料電池用カソード酵素の開発を行った。バイオカソードにはラッカーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ/グルコースオキシダーゼ複合酵素、をためした。アノードには、すでに開発している好熱菌由来のグルコース脱水素を用いた。電流密度、開放電圧を評価項目として試した。その結果、ラッカーゼとビリルビンオキシダーゼは、最大電流密度0.01mA/cm2、開放電圧0.6Vを得た。ペルオキシダーゼ/グルコースオキシダーゼは、期待が大きかったがよい結果が得られなかった。酵素の安定性や価格の点でラッカーゼが最適であることがわかった。また、カソードに多孔質体を使用すると電流値がやや増加した。さらに、前倒しとして、単層カーボンナノチューブの高性能化を取り組んだ。すでに、実績のあるアノード電極用の酵素である、グルコース脱水素酵素と孤立した単層カーボンナノチューブ間の直接電子伝達を形成した。その際、単層カーボンのチューブの直径依存性を調べた。改良直噴熱分解合成法は、直径だけを変え、長さ等の他のパラメーターを変えないので、この研究目的に適する。直径1.5nm以下の単層カーボンナノチューブを用いたアノード電極が1.5nm以上に比べて高い電流値を示すことがわかった。これは、酵素の表面の1.5nm溝の奥深くに活性中心があり、その溝幅以下の直径の単層カーボンナノチューブが近づけるという仮説に沿っている。以上より、当初の計画はおおむね達成でき、一部第二年度の研究計画について取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度は、単層カーボンナノチューブの高機能化を行う。これまでの成果は、直径が1.2~1.7nmを持つ単層カーボンナノチューブを用いて直接電子伝達を実現したが、FADとの推定距離は1.0nmであり、完全に密着していないため、電流を流すために大きな電圧(過電圧)が必要であった。本課題では、より直径の細い(0.76~1.0nm)単層カーボンナノチューブを用いたり、キラル分離を行い、単一分散性直径の分離についても取り組み、性能向上を目指す。直径の細い単層CNTは、様々な作製方法によって、純度、直径分布、長さ分布、残留不純物など多くのパラメーターが存在するため、一つ一つの分離精製処理の最適化を行う。その後、酵素と組み合わせての評価を行い、単層カーボンナノチューブの高機能化処理にフィードバックさせる。この研究計画が律速になると予想されるため、前倒しすることにより、全体の研究計画を高い確率で達成できることができると予想される。 第三年度は、変更ない。すなわち、酵素燃料電池および自己電源型バイオセンサのプロトタイプの開発を行う。第一および第二年度で開発した技術を融合した酵素燃料電池および自己電源型バイオセンサのプロトタイプを開発する。プロトタイプ開発にあたり、電池性能は、電圧1V以上(酸化還元電位差:1009 mV(-219 mV、+790 mV))、電流は、4 mW/cm2以上、と従来品以上の出力を目指す。自己電源型バイオセンサでは、従来品よりも低検出電圧および高電流値を目指す。また連続出力7か月以上(耐熱性酵素の寿命:7倍以上)を目指す。この事からシステム全体として室温~高温(78.8℃)まで安定動作し、3年以上の保存安定性を持つシステムを開発する。作製のために、応募者が過去の基盤研究Cで得た研究成果であるバイオナノ界面プロセスを利用する。
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Causes of Carryover |
研究が当初よりも進んだため、それを見越して、前倒し額を、700,000円請求した。しかし、想定よりも研究費用が少なく済んだため、次年度使用額503,000円が生じた。実質は、研究予算の消費は、おおむね研究計画通りに進行している。
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