2022 Fiscal Year Research-status Report
浪費回路の制御を介した微生物の熱エネルギー変換効率の制御
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19K05174
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
田畠 健治 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (80312263)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 代謝熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物の熱生産の制御によるバイオマスの生産量の調整を行うために、バイオマス生産を伴わないエネルギー消費である浪費回路の解明とその制御を目指している。これまでに、発熱量を指標とした微生物の探索を行い、生育温度により浪費回路による発熱量が変化する微生物(P. putida KT1401)を単離し、その浪費回路に関わるタンパク質発現について調べた。本年度は、昨年度に取得したランダムミューテーションにより調整したP. putida KT1401の変異株の性質について調べた。その結果、浪費回路に基づくと考えられる発熱量の上昇が観測されない変異株3-38株を得ることができた。この3-38株のコロニー温度の培養温度依存性および発熱量の温度依存性を調べた結果から、3-38株は、環境温度依存性発熱能(浪費回路)を欠損したことにより、コロニー温度が上昇しなくなったことが示唆された。そこで、3-38株の環境温度依存性発熱能の復帰変異株を得るために、P. putida TK1401のゲノムライブラリーを構築し、復帰変異体の作成を試みた。遺伝子組み換えによるP. putida TK1401変異体の作成について検討した結果、P. putida TK1401は接合伝達による形質転換が可能であり、pBBRoriを持つプラスミドは複製可能であるが、ColE1oriを持つベクターは複製できないことがわかった。そこで、ColE1ori、mobおよびカナマイシン耐性遺伝子をもつベクターを構築し、相同的組換えによる形質導入を試みた。相同的組換え領域としては、走化性レセプターの遺伝子 (mst) を対象としたが、相同的組換えによる変異体は作製できなかったため、今後は、他の遺伝子をターゲットとした相同的組換えを試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本申請では、生育温度や培養条件により発熱量が変化する微生物であるP. putida KT1401が持つ浪費回路を利用した、微生物の熱エネルギー変換効率の制御を目的として研究を行っている。これまでの研究により、この微生物の浪費回路を介した熱生産には、尿素サイクル中の酵素Ornithine carbamoyltransferase (OCT)が関与していることが示唆されていることから、P. putida KT1401株のOCT遺伝子及び、その調節機構について明らかにするために、P. putida KT1401株の遺伝子解析を現在行っている。また、ランダムミューテーションにより得られた変異株を用いて、浪費回路の欠損による微生物の生育への影響や浪費回路に関わるOCT以外の遺伝子について調べている。また、P. putida KT1401以外の微生物として、P. fluorescens PAO1株の発熱量測定を行い、sn-Glycerol-3-Phosphate Dehydrogenasの欠損により熱エネルギー生産量が増加することや、多剤耐性の獲得により、熱エネルギー生産量が低下することを明らかにしている。これらのP. fuorescence PAO1株の結果から、P. putidaの遺伝子改変により熱エネルギー生産の制御可能であることが示唆されている。そこで、浪費回路に関与すると考えられる遺伝子を、浪費回路を持たないP. putida TK2440に対して導入することを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、P. putida KT1401の変異株の性質と遺伝子について詳細な検討を行うことにより、P. putida KT1401がもつ浪費回路について明らかにしていく予定である。P. putida TK2440へのOTC遺伝子の発現と調整を行い、P. putida TK2440への浪費回路の発現を試みる。そのために、酵素の構造遺伝子のコピー数やプロモーターの検討による酵素発現量の最適化や、調節遺伝子の導入による発熱量およびバイオマス生産量への影響を明らかにする。今年度は、さらに、OTC阻害物質などによる、浪費回路の調節方法についても検討していく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスによる大学への登校規制により、研究の進捗が遅れ、1年遅れで実験が進められている状況である。また、参加した国際学会のオンラインでの開催により、海外出張がなくなった。次年度は本年度に計画していた実験を遂行し、当初の計画に近づけられるように努める。
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