2019 Fiscal Year Research-status Report
堅牢な有機フレーム内に柔軟なペプチド鎖をもつ低分子受容体ポケット多種類材料の創製
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19K05181
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
古澤 宏幸 山形大学, 大学院基盤教育機構, 教授 (60345395)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 共有結合性有機構造体 / アミンカップリング反応 / 脱水縮合剤 / 水晶振動子微量天秤 / 金電極 / ナノ薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、数百種類の受容体で匂い分子を識別している生体の嗅覚システムを模倣した低分子認識システムを人工的な材料で実現するために、受容体ポケットのフレームワークとして共有結合性有機構造体(Covalent Organic Framework: COF)を利用し、その支柱部分に多品種オリゴペプチドを組み込むことで生体類似の受容体ポケットを調製することを目的とする。 本年度は、受容体ポケットの土台となる共有結合性有機構造体の調製に取り組んだ。開発する材料は将来的に電気化学センサーの電極表面に塗布して低分子センシングに活用することを想定しているため、金電極上に共有結合性有機構造体をstep-by-stepでの調製を試みた。構造体の形成過程はナノグラム・オーダーの質量が測定できる水晶振動子微量天秤装置を用いて積層される様子を質量増加で評価した。 金電極上にAu-S相互作用によりカルボニル基を導入し、縮合剤により活性エステルとした後にテトラポッド構造で4ヶ所にアミノ基をもつテトラミン化合物と反応させた。基板を洗浄後、縮合剤とともにジカルボニル化合物を反応させ、さらにテトラミン化合物を反応させる操作を繰り返した。1層の質量増加分を測定したところ31 ng程度ずつ増加することがわかった。 設計通りの1~2 nm辺のダイヤモンド構造の共有結合性有機構造体が1層ごとに組み上がるとして計算した場合、1平方cm当たり37 ngの質量増加と予想されることから、多少の欠損が存在するものの構造体が組み上がっていることが示唆された。今後、構造分析を行う必要があるが2~3nmのナノ空間のある薄膜が形成されている可能性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
材料試薬の選定・組み合わせ、縮合剤の選定、step-by-step反応の設計など検討し、共有結合性有機構造体の薄膜が形成され得ることが確認できた。一方で、共有結合性有機構造体の薄膜を1層ずつ積層を繰り返すと質量増加量も減少してしまうことも見られた。構造体薄膜に欠損が存在していることが考えられ、できる限り欠損のない薄膜形成条件を探る必要性があることがわかった。 今年度は受容体ポケットの土台調製に注力したため、多品種オリゴペプチドの導入は次年度以降とした。 並行して将来的に電気化学センサーと組み合わせるための準備として、電気化学測定デバイスの導入、測定体制を整備した。
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Strategy for Future Research Activity |
より欠損のない構造体薄膜の調製を目指し、構造体の中にひずみを解消するような柔軟性のある層を導入することや、低温でも反応が進行する縮合剤の使用、反応中の試薬濃度、温度、時間等を最適化しゆっくり構築することで欠損のない構造体を組み上げることを検討する。 並行して、今年度予定していた多品種オリゴペプチドの準備、構造体への導入を次年度実施として検討する。 薄膜構造体の構造分析を行い、薄膜評価に取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた多品種オリゴペプチドの調製を次年度以降としたことに伴い、それに係る物品費を次年度に繰り越すこととなったため
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