2021 Fiscal Year Annual Research Report
超原子電子軌道(SAMO)の実時間実像イメージング法の確立
Project/Area Number |
19K05182
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 正洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80282333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 洋一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20435598)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超原子分子軌道(SAMO) / 電界放出顕微鏡(FEM) / 実時間イメージング / 実空間イメージング / エネルギー分析 / フラーレン / 半導体有機分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、電界放出顕微鏡(FEM)を応用して、分子の外側に形成される、分子を原子核と見なす巨大な原子軌道である超原子分子軌道(Super-atom Molecular Orbital; SAMO)の実時間・実空間イメージング法を開拓するものである。FEMは尖鋭化した金属針先端から放出される電子の投影であり、先端を構成する表面の仕事関数分布に対応する像が得られることは知られている。ここで、金属針先端に分子を吸着させると、吸着分子の原子構造に関連したパターンが現れることがあるが、その起源は解明されていなかった。我々は、C60を吸着させた際に、その存在がSTM観測で確認されているSAMOの形状に対応したパターンがそのまま観測されることを見いだした。制御された条件で詳細に観測することから画像化機構を明らかにし、分子軌道の新たな実時間・実空間イメージング法として確立することを目的とした。 タングステンエミッタにC60を吸着、加熱することで安定な炭化物が形成され、その先端にC60を吸着させFEM計測を行うことで、再現性よくSAMO軌道を実時間・実空間で画像化できることを示した。さらに、環境の変化に対応して、同一分子のSAMOのs、p、d、f軌道の遷移、回転ともに、炭化物の厚さ、先端曲率半径に対応した拡大倍率の変化を明らかにした。さらに詳細に検討すると、そこで観測されるエネルギースペクトルは、総じて単独のSAMO軌道で予想されているものより幅が広いこと、C60以外の多様な有機分子でも同様にSAMO軌道が観測されることなどを明らかにした。すなわち、FEMが、分子のSAMOを含む非占有準位の実時間・実空間での画像法であり、実用となる計測法であることを実験的に示した。ただし、可視化される軌道に何らかの選択性が存在する可能性も示唆され、その全貌の解明は不十分である。更なる検討が必要である。
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Research Products
(4 results)