2021 Fiscal Year Research-status Report
金属クラスターへの希土類元素の添加効果:極微金属中でのs-f電子間相互作用の解明
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19K05185
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
荒川 雅 九州大学, 理学研究院, 助教 (10610264)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金属クラスター / s-f電子相互作用 / s-d電子相互作用 / 電子局在/非局在 / ランタノイド / イオン-分子反応 / 幾何構造 / 超原子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、量子化された状態密度を持つ有限個の伝導s電子と局在f電子との相互作用を探究するため、酸素との反応性をプローブとして、気相のランタノイド添加銀クラスターの電子構造を調べる。マグネトロンスパッタ法で生成したランタノイド添加銀クラスター正イオンを四重極質量選別器でサイズ選別し、イオントラップに捕捉した。反応時間を変えながら酸素との反応を調べ、反応物と生成物の強度の時間変化から反応速度係数を算出した。 昨年度までに、ランタノイドとしてセリウム、サマリウムを選択し、セリウムもしくはサマリウムを1原子添加した銀クラスター正イオンと酸素との反応実験を行った。今年度は、セリウム添加銀クラスター正イオンおよびサマリウム添加銀クラスター正イオンと酸素との反応の生成物とカイネティクスを詳しく解析した。 セリウム、サマリウムのどちらを添加した場合でも、小さいサイズでは添加のない銀クラスターに比べて5桁程度高い反応性を示したが、あるサイズで反応性が急激に減少した。反応性の低下と同時に、生成物が変化することも見出した。小さなサイズでは、O2がCeと結合した解離を伴う生成物が主体であるのに対し、大きなサイズでは解離を伴わない酸化物が生成した。この結果は、ランタノイドの内包により反応サイトがランタノイドから銀へと変化したことを示す。 さらに、低い反応性を示した大きなサイズの中で、電子閉殻の形成による反応性の極小を観測した。反応性極小を観測したサイズから、d電子は非局在化して閉殻に寄与する一方、f電子の非局在は電子閉殻構造に寄与しないことが示唆され、f電子が非局在化しない原因について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までの実験を拡張して実験を行うとともに、反応生成物を詳細に解析し、反応性との相関を見出した。また、反応経路や電子構造の解析を進めた。s, d電子の価電子総数が18の時に反応性が極小を取る一方で、f電子は閉殻構造に寄与しないことを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従って、理論計算から得た電子構造の情報と実験結果とを比較してs-d電子相互作用、s-f電子相互作用を明らかにしてきた。今後は、実験の結果と電子構造計算とを総合して議論を深めるとともに、新型コロナウィルスの影響で、延期となった成果報告と成果の発信に務める。
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Causes of Carryover |
理由:新型コロナウィルスの影響で、成果報告のために参加予定だった国内外の会議が中止になったため。 使用計画:予定より消耗の激しかったランタノイド金属ターゲットの購入に加え、2022年度の国内および国際会議で成果報告を行うとともに、論文を発表のための費用に用いる。
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Research Products
(3 results)